実は、本大会での道路使用許可は、わずか6時間という短いものであった。準備と事前チェック、片づけまでをすべて含めての時間である。その困難を乗り越えたのが、200名を超える地元の石見地方のボランティアスタッフの存在だった。
レースでは「Go Track Barriers」というイタリア製のカート専用の安全防護体(バリア)をコース周辺に1620個設置する必要があった。重量は6個で約72㎏にものぼる。綿密なスケジュールと役割分担、何よりボランティアの存在がなければ実施は不可能だった。
また、仲間集めの一環として、クラウドファンディングも実施。県外も含めて250名以上から支援が得られた。そして、徐々にその輪は広がっていき、地元の人たちも最終的にはボランティアスタッフとして、運営の一端を担い、心強い仲間となった。
200名以上のボランティアスタッフによる設営作業
消滅可能性都市と言われた江津市で、地元の建設会社とコンサル会社の人間の会話から出発し、7年という歳月をかけて情熱を持ち続け、地域を巻き込んだ挑戦だった「A1市街地グランプリ」。A1のAは「Anyone=誰もが」を意味している。観戦する人、競技に参加する人、イベントを支えるボランティア、すべての人たちのことを指している。
来年以降は外部からも集客を図ることで、この町の新しい観光資源となるかもしれない。また公道レースが江津市に留まらず、日本各地で展開される可能性もある。江津市のAnyoneだったものが、日本全体のAnyoneとなる日がくるかもしれない。
街全体を巻き込んだ市街地レースは今後広がっていくことを期待したい
連載:「遊び」で変わる地域とくらし
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