10月1日、パナソニックはスポーツ事業の拡大と強化を目指して、スポーツマネジメント推進室を発足すると発表した。自社で保有するスポーツチームを強化し、持続可能なスポーツ事業へと成長を図っていくという。
さらに、新たな組織を核として、パナソニックが独自で培ってきた「資産」を活かすことで、スポーツ事業のさらなる拡大を目指す。
世界がコロナ禍という未曾有の危機に直面するなかで、パナソニックがスポーツビジネスに描く未来とはどのようなものなのか。スポーツマネジメント推進室の担当役員で、パナソニック常務執行役員CSO(最高戦略責任者)の片山栄一氏に話を聞いた。
──今回、スポーツマネジメント推進室発足へ至った経緯は、どのようなものだったのでしょうか。
昨年のラグビーワールドカップが非常に盛り上がったことが、大きなきっかけとなりました。当社からも6人の選手が代表入りして、全国的にラグビー熱も非常に高まりました。しかし、その盛り上がりが落ち着いたところで、ふと「いまのわれわれは、あの成功を十分に活かせているか?」という疑問が浮かび上がってきたのです。
パナソニックが、スポーツ事業へと資しているリソースは、日本企業のなかでもトップクラスだと自負しています。プロスポーツのガンバ大阪だけでなく、アマチュアでもバレーボール、ラグビー、社会人野球、アメリカンフットボール、9人制女子陸上、剣道など、これまで多様な企業スポーツに取り組んできました。長年にわたりオリンピックのスポンサーもしています。
スポーツ事業へのリソースは、日本企業のなかでもトップクラスだ(「事業戦略説明会 パナソニックが狙うスポーツ事業」より)
こうした積み重ねもあって、弊社のスポーツ事業は一定の認知と存在感を得られるようになりました。しかし、我々が本当にスポーツ事業全体の活動を意味のあるものにできていたかというと、決してそうではない。正直、放ったらかしの面もありました。
また、発足のタイミングとして、ラグビーやバレーボールなどの企業スポーツチームの「プロ化」を目指していきたいと考えていたこととも重なりました。
いまは、海外を含めて、スポーツビジネスのマーケットがかなり拡大している時代です。実力があるチームにもかかわらず収益化が図られていないという状況を軽視すれば、日本のスポーツビジネスの未来そのものが危ぶまれるように感じました。
──スポーツ事業に対して、会社としても危機感をもっていたということなのですね。
われわれがサポートしているガンバ大阪の運営もあまり余裕のある状況とは言えませんし、話題となったラグビーやバレーボールに関しても、今後のプロ化の道筋は極めて厳しいものと考えています。
マネジメントサイドに目を向けてみても、運営や管理やサポートの仕方に組織内でバラつきがあったのは事実です。スポーツ事業において、支援する企業の興行窓口が一本化されておらず、ビジネスに直結する物販やソリューションなどの窓口と、それらの興行窓口との連携も取れていないという課題がありました。
スポーツ界全体がこのようにマネジメントを怠れば、選手だけでなく、スポーツをプレイする人口自体も減っていく。そこで、日本のスポーツマーケットを盛り上げるためにも、まず当社で抱えるスポーツ事業を持続可能な形へと変えていく必要があると考えたのです。
会社として、スポーツ事業への取り組みに主体性が欠けていた。そんな状況を変えていかねばならないと、新たな組織の発足に至ったわけです。