「不妊治療は性的な質問もあるので、クリニックで直接聞きづらい人も多い。例えば、『○○日くらいに性交渉を持ってください。時間帯は朝でも大丈夫なので』と、となりの患者さんとのあいだに衝立しかないスペースの中で言われるわけです。それを恥ずかしく感じてしまう。
本当は男性側が2回に1回しか射精できないなど、性機能障害の可能性があることへの恥ずかしさから隠してしまうケースが少なくありません。クリニックへ行くのは不妊に悩む人々にとって心理的なハードルが高く、“不妊診療科を受診する”という行動そのものによって自分たちが不妊であることを認めることにもつながり、とくに女性側にとって『自分は妊娠できる力がない』という風にアイデンティティをひとつ壊されているようにストレスを感じてしまいやすいもの。
言わば“不合格判定”を認めて、クリニックへ行くのは女性として勇気がいる。そのため、長期間に渡って躊躇してきた方々も多く、クリニックに勤務していた当時「もっと早く相談に来てくれていたら……!」と思ったことが何度もありました。その空白の数年間、なぜ待ってしまったんだろう?と。
その点、LINEは顔が見えないので相談はしやすくなる。また、クリニックは診察時間がワークタイムと重なっており、それぞれ働いている夫婦・カップルはなかなか行きづらく、昼休みも電話がつながりにくいので問い合わせが難しい。そうした問題もLINEは解決してくれます」(西岡)
サービスリリースから約1年半で累計登録者数は1.5万人にのぼり、2019年10月以降は前年同月比800%を超えるペースで増加。また、登録者の93%が「famioneでまたアドバイスを受けたい」と回答するなど、満足度も非常に高い。
「意図的に情報を拡散させ、登録までコンバージョンさせる施策を打てば、もっと登録者は増えていたかもしれません。でも不用意に登録者を増やしても意味がない。例えば、専門家の体制が整っていない状態で登録者を増やしてもアドバイスが遅くなってしまい、体験を損ねるだけ。そのため、いかに価値提供できるかだけを考えて、着実にサービスを成長させています」(石川)
少し前は看護師が1時間30分〜2時間かけてアドバイス内容を作成していたそうだが、現在はシステム構築による効率化が進み、質を維持したまま、1つの悩みに対して約5000文字のアドバイスを15分ほどで作成できているという。そうした、きめ細やかなサービスの仕組みが高い満足度につながっている。
ユーザーファーストの姿勢はリリース以来一貫しており、先日も新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う施策や措置で困っている妊活中の人たちを支援するため、4月末までの妊活自由相談の無料提供も開始した。
大企業を軸に、社会を変えていく
また、ファミワン は一般のユーザー以外にも法人向け福利厚生プログラムを2018年9月から有償で提供している。これまでに小田急電鉄やミクシィグループでの福利厚生導入に加えて、伊藤忠商事労働組合、全日本空輸(ANA)、ソニー、メルカリなどでのセミナーも開催してきた。なぜ、法人向けにもサービスを提供するのか。
その背景には、「妊活を社会全体で支えられるようにしたい」という石川と西岡の強い思いがある。妊活を“女性がひとりで悩むもの”にしたくないのだ。