ビジネス

2019.10.01 07:00

「松下幸之助だったら、どう思うだろう」前田裕二が語る、経営者必須の「最強の剣」

前田裕二


「松下さんがご存命だったら、この手法を見てどう思われるのでしょう。顧客を働かせるなんて、と叱られるのでしょうか。でも、そもそもぼくはSNSを使うときに、フォロワーのことを顧客とはとらえていません。彼らはもはやお客様ではなく、同じ夢をもってともに何かを成し遂げる戦友であり、共犯者です。
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最近のSNSの傾向として、お金が欲しい!と利己的に行動している人にはそんなにお金が集まらなくて、逆にお金以外の目的感で動いている人には、なぜか不思議とお金が集まってくる。

SNSという場所はおそらく、『ビジネスとして活用しよう』とあまりシャカリキにならないほうが、結局はよい結果がもたらされるのかなと思います」

「嘘」が炎上の種になる
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経営者や芸能人、政治家といったインフルエンサーがSNSを使うと、常に炎上リスクがつきまとう。たった一言の不用意なつぶやきを引き金に炎上が止まらなくなり、株価下落やブランドイメージの毀損を引き起こしかねない。SNSで地雷を踏まないよう、秘書室なり広報の職員が事前にチェックをかけたり、プロデューサーが戦略的にバズる投稿を仕掛ける方法もある。

「ツイッターやフェイスブック、インスタグラムをやるときは、第三者のチェックは入れません。投稿はすべて、自分自身の判断でやっています。誰かのフィルターを間に入れたら、社会や人々と自分の感覚とをダイレクトに接続できなくなってしまう。その微妙なズレ、世間の感覚との齟齬が積み重なると、どこかでそれが、炎上という形で顕在化するのかな、と思っています」

取材中、前田の口から「琴線」という単語が何度も出た。「琴線に触れる」という慣用句は、人々が感動し、共鳴する心の揺れを琴の糸にたとえたのが語源だ。SNSで流れる膨大な言葉をシャワーのように浴びながら、前田はその糸の微細な揺れに目を凝らす。

「人々がいま、何に幸せを感じているのか。いま、どういうことに憤りを感じているのか。よくも悪くも自分は仕事柄、朝から晩までずっとネットとつながっているわけですが、おかげで、いまこの瞬間、世の人々の心の琴線がどこでどのように触れているのかが、皮膚感覚で感じ取れるようになっている気がします。

SNSは人が現実世界で身にまとう余分なものを削ぎ落とし、心と意識がそのまま文字として反映されやすいツールです。だからぼくはいつも自然体で、誠実な、ありのままの自分を投稿するようにしています。


もしぼくの発言が炎上したら、『自分の発想、自分の思想は世の中とだいぶズレているんだな』と気づいてすぐに修正すればいい。自分が提供しているバリューと、社会が求めているバリューがズレたり反り返っていたら大変です。自分という存在が、社会と順手で接続できているのかどうか。SNSは、それを定期監視するためのツールでもあるのです」
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文=荒井香織、写真=筒井義昭

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