「7万円の器量」懐を痛めてようやく学べること|小山薫堂

イラストレーション=サイトウユウスケ

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第43回。

長年の腰痛もちである筆者が、ラジオ番組で「腰痛部」を発足。話はそこから和室の魅力へと飛び、最近購入した魯山人の壺の秘密にまで至り──。


いまや日本人の4人に1人が腰痛もちという時代。僕がパーソナリティを務めるFM横浜「FUTURESCAPE」にも、心の腰痛コミュニティ「腰痛部」がある。僕が久しぶりにぎっくり腰をやらかしたと番組で話したところ、「私も腰痛もちです」というリスナーが非常に多く、だったら痛みを分かち合おう、対策を練ろうということで、2017年10月に発足した。

いまも月に1回のペースで、腰痛部のパトロン「メディチ長谷川」や、腰痛改善のプロフェッショナルにご登場いただき、さまざまな腰痛談義を繰り広げている。

このメディチ長谷川こと長谷川康之さんは、僕の20年来の友人だ。1986年にPR会社「トレイン インターナショナル」を起業、ルイ・ヴィトン心斎橋店オープニング企画として新幹線をジャックした「ルイ・ヴィトンエクスプレス」を走らせたり、バナナ輸入組合のPRではラフォーレ原宿前に本物のワニのいる「原宿バナナ園」を期間限定でオープンしたりと、なかなかのアイデアマンである。

そのうち自社ブランドの商品開発も始め、イタリアの血管外科医と共同開発したむくみ・疲れなどに効果的な段階式着圧ストッキング「メディカル ステイフィット」は250万足、女優のメイクルームにある女優ミラーを手のひらサイズにしたLEDライト付きコンパクトミラーは30万個を実売と、こちらもなかなかの商才を発揮中。

その長谷川さんが満を持して開発したのが、日本人のためにつくられた姿勢矯正椅子「アーユル チェアー」である。

和室に学ぶ、古の美意識

長谷川さんによれば、そもそも日本人と欧米人とでは身体がまったく違う。農耕民族の日本人は身体の前側の筋肉が発達しており、狩猟民族である欧米人は後ろ側の筋肉が発達している。そのため、日本人の道具は引いて使い、欧米人の道具は押して使うものが多い。例えば日本人はクワで引いて耕すけれど、欧米人はスコップで押して掘る。日本の鋸(のこぎり)や鉋(かんな)は引いて使うし、欧米はその逆だ。また、刀は引いて切断するが、フェンシングは押して突く。

そしてここが大事なのだが、椅子は欧米人の座る道具なのだという。日本人の座り姿勢は長らく正座やあぐらであり、骨盤が立つので自然と坐骨で座れていた。椅子だと坐骨で座れず、姿勢が崩れ、それが腰痛の原因となる。アーユル チェアーは通常の3分の1ほどの座面に足を開いてまたいで座るので、坐骨座りが可能。よって腰痛が軽減し、骨盤のゆがみが整い、集中力がアップするというわけだ。


農耕民族の日本人と狩猟民族である欧米人は筋肉の付き方が違うので、使う道具もまったく違うそう。

僕は早速オフィスの会議室の椅子をアーユル チェアーにしたが、最初はすごく痛かった。でも、だんだんと坐骨で座るコツがわかってきて、いまではどんな椅子でも姿勢よく座れるようになった。トレーニングチェアーとしては最適だと思う。

いまいちばん欲しいのは、和室用の「アーユル チェアー あぐらイス」だ。昨今、有名企業やアスリートなどが瞑想を通じて心の状態を整える「マインドフルネス」が話題だが、このあぐらイスでの姿勢は深い瞑想にも入りやすいらしい。
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イラストレーション=サイトウユウスケ

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