デヴィッド・ボウイの魂を「クルマ」に 日本人カーデザイナー山本卓身

デザイナー 山本卓身が手がけたコンセプトカー「A portrait of db」


山本と話をしていくうちにわかったのは、製造工程における3Dプリンターの重要性だ。もちろん、何枚でもスケッチは書けるだろうけど、それらを立体として表現するのは難しいという。



「普通の製造方法では、この入り組んだ造形の多いコンセプトカーを組み上げることは難しかった。でも、3Dプリンターを使えば、何でも作れてしまいます。また僕はこの肖像を普通の方法で作りたくなかったのです。彼が生を受けた様に、この肖像にも「生まれて」欲しかった。無から全てが生み出されるような工法、3Dプリンターのおかげで、それが可能になりました」と語る。

しかし、こんなに複雑なプロジェクトは、さすがに独りだけではできない。そこで、山本は1年前から工業デザイナーのシリル・アンスリーとCGIアーティストのアレクサンドル・ラーナックの協力を得て、3Dプリンターの作業をコツコツと進め昨年末ついに作品を完成させた。

日本人がフランスの地で、英国人の歌手のために、スーパーカーの形をした作品を作る。まるでそれ自体が、多くの役を演じたボウイの人生そのものみたいだ。山本は子供の時からデザイナーのなる運命だったようだ。



「僕は3人兄弟の末っ子で、ふたりの兄がいます。9歳の時、兄に見せられたランボルギーニ・ミウラ・イオタの写真に釘付けになったんです。このクルマの1枚の写真に惚れて、カーデザイナーになることを決めました。スーパーカーをデザインする、カーデザイナーになるんだ!と」

ボウイの音楽が、また、セクシーで美しすぎるといわれたボウイ本人が、山本の作品で永遠の立体の形に表現された。それこそ「ヒーローズ」と言えそうなネーミングだ。

連載:国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」過去記事はこちら>>

文=ピーター ライオン

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