国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

マツダ3

マツダという自動車メーカーは、ブランドを再構築するのが好きらしい。

他のカーメーカーと違って、広島に拠点を置くというアイデンティティーを強く打ち出すマツダは、2002年から2015年の間に2回以上、そのブランドを再構築してきた。

2002年、マツダ・ブランドの再活性という大志を実現するためにマーケティングを方向転換。ラディカルな外観のデザイン戦略を打ち出し、日本以外、つまり海外市場での車のネーミングも「626」のような3桁の数字から、「Mazda6」のような1桁に変わった。

それから10年後の2012年、同社の代名詞となるスカイアクティブ技術を打ち出し、それまでとまったく違う「魂動デザイン・ランゲージ」というコンセプトを具現するCX-5を誕生させた。

そして、今年2019年、マツダはMazda3 (これまでは「アクセラ」)を導入することによって、わずか17年で3度目の正直、ではなく、3度目の革命を起こしていると言える。

カギは「骨盤」にあった

登場したこのマツダ3は、何から何までまったく新しい。セダンとハッチバックとのコンビネーションは、色気たっぷりのデザインの新方向を宣言している。この外観の新鮮な美しさを、これから発表される同社のモデルに一貫して採用することになる。

マツダ3の新しいデザインは、骨盤への着目からスタートした。そう、人間の骨盤だ。マツダは、 快適性、走り、乗り心地を向上させるために、人間の骨盤と、股関節などのその周辺の機能に目をつけたのだ。

それは、元サッカー選手で同社の操安性能開発部 上席エンジニアを務める、「人馬一体」の巨匠と呼ばれる虫谷泰典氏が膝の手術で入院し、快復を待っていた時にピカッと来た閃きこそが発端だった。

虫谷は、マツダの全車種のサスペンションを最終的にセッティングする立場にあった。しかし、サッカーの試合中に捻った膝を手術してから2カ月も病院のベッドに臥せることに。その間、彼には脚についての解剖学的な知識や、歩くという動作のメカニズムを医師たちから学ぶ時間がたっぷりとあった。

「それで、理解したんです。医師たちは、私の膝や脚について説明してくれてたのですが、膝の構造や歩行のメカニズムは、クルマのシャシーの微妙なチューニングやサスペンションのセッティングとまるで同じだということを。すべてはバランスなんです。そして、そのバランスはどこで取るのかというと……」

そう、もうお分かりだろう。バランスは骨盤が司っている。



「病院で学んだのは、クルマの乗り心地、ハンドリングとバランスを向上させる極意は、人の歩行技術を学ぶことで得られるということ。そして、骨盤を垂直に保つことは、良い姿勢だけでなく、理想的なシートのデザインにも重要だということでした」と、彼は熱弁した。

「例えば、S字カーブを走行するときに、上体と頭は違う方向に動く。それは、最小限にとどめたい。そこで当社の新しく進化させたシートと、さらにサポート力の増したクッション、それに特に重要なシートの座面と腿のサポートが、骨盤の位置を垂直に保ちます。私たちが作ったのは、頭の動きを抑制して、通常の運転をしている時の全身を安定させることができるシートです」

確かに、ライバルであるVWゴルフやスバル・インプレッサと比較しても、マツダ3のシートは安定性が高く、乗り心地が良く、頭の動きが少ない。

文=ピーター ライオン

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