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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

デザイナー 山本卓身が手がけたコンセプトカー「A portrait of db」

山本卓身には夢があった。子供の時からずっと憧れていた英国の伝説的な歌手デヴィッド・ボウイと一緒に、スーパーカーを企画してコンセプトを作りたかった。その企画書をちょうど準備していたら、ボウイが急死してしまった。2016年1月のことだった。

あまりのショックでどうしようかと迷ったが、山本は「じゃあ、合作をやめて、ボウイに捧げるコンセプトに変えよう」と決めた。そして3年かけてついに出来上がったのは、あっと息をのむほどに美しい「A portrait of db」(以下db)。

「db」は、パリ・アンヴァリッドで開催された第34回フェスティバル・オートモビル・インターナショナルで、構想から21年の時を得て、ボウイに捧げるコンセプトカーとしてアンベールされた。



「僕は、1997年に最初のスケッチを書いた。当時は、東京の部屋の壁にボウイのポスターを貼っていた。そのポスターに書かれていたDavidの最後の文字「d」と、Bowieの頭の「b」が目立っていたので、そのdbの組み合わせから閃きが生まれた。そのdbはまるで車のエムブレムに見えた。ボウイの才能を生かしてぜひコンセプトを作りたいと思い始めた」と、山本は言う。

山本は、2008年、ドライビングゲームで大人気のグランツーリスモ5のために、ポロフォニデジタル社と共同開発で「GT by シトロエン」を手がけたデザイナーとしても有名だ。彼は、その頃シトロエンのデザイナーだったけれど、いまは同じ業界でデザイン会社を設立し活躍している。



彼の最初の計画は、数カ月間、ボウイと正式に協力し、彼と帯同することによって彼のことをより深く理解し、クルマをデザインすることだったという。そのために、クルマのスケッチをいっぱい書いてプレゼンしようと思っていたのに、その数週間後に帰らぬ人となってしまった。

ところで、山本はボウイにどのようにインスパイアされたのか。まず、ボウイの人間性と音楽を考えた時に、「純粋、カメレオン、大胆、壊れやすい、という4つの言葉をまず想像して、それを形態へと変換した」という。

「それと同時にパラメトリックデザインという手法を用いて、彼の音楽に出てくるパラメーター(特色)を分析し、クルマのフォルムの一部を造形した(左側面のクリスタル群)」

「言うまでもなく、ボウイの歌詞にも影響されましたね。特にヒーローズという曲の歌詞が好き。『僕らは英雄になれる、一日だけなら、僕らは一緒でいられる、一日だけなら』とかね」と山本。「その歌詞からは、デザインと音楽に国境はないということを感じた」という。

ボウイはしょっちゅう姿を変えた。ジギー・スターダストなどの歌や映画の中でもいろいろな役を演じた。山本は、ボウイのそうしたあらゆる役から少しずつインスパイアを受けて、クルマの上に衣装を重ねるように彼のその多面性を表現した。

文=ピーター ライオン

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