2つ目はスマート化。いま少しずつ普及してきているスマートホームデバイスだが、最大の難点はデバイス同士の連携がむずかしいことにある。
現状は従来の住宅に後付けでA社のスマートLED照明、B社のスマートロックといったように個別にスマートホームデバイスを付け足さなければならなかった。メーカーごとにアプリの仕様も異なるので、それぞれのデバイスを音声で起動するといった使い方しかできない。
本間は、この原因を「既存のホームビルダーがテクノロジーに詳しくないことにあります」と説明する。そこでHOMMAでは、建築目線ではなくユーザーエクスペリエンスを優先した家を設計するという。
また、スマートスピーカーなどを組み込めるスペースをあらかじめ用意しておく。例えば、帰宅して入り口のドアを開けたら、自然にリビングの明かりがつき、シェードが開く。設計段階でスマート家具が組み込まれているので、こうした家具同士の連動も難しくない。
「いまのスマートホームは、オペレーションが手動から音声に切り替わっただけ。ユーザーが操作する時点でダメ。ひとに合わせてセンサーなどとトリガーに複数のデバイスが同時に動き(オーケストレーション)、自動で状況を最適化するのが理想です」(本間)
3つ目は間取り。本間は「リビングがあってキッチンがあって、書斎があって……というように、現在の住宅は、1920年頃に考案されたデザインのまま。僕らはフロアプラン自体を、いまのユーザーに最適な形で提供したい」と語る。
例えば、子ども部屋には勉強机を置くのが当たり前だが、実際はダイニングキッチンのテーブルで料理中の母親と会話しながら宿題をする子どもも多い。
また、PCでの作業がほとんどになった現在、本当に書斎は従来のスタイルでいいのか。本間は実際にアメリカの家庭を訪問し、理想のフロアプランを探求しているという。
日本の高度な技術で、アメリカの住宅市場をアップデートする
(beeboys / Shutterstock.com)
アメリカではスマートスピーカーはすでに5000万台以上が設置されており、普及率はすでに21%を超える。今年中に50%を超えるとの予想もあるほどだ。一方、日本の普及率は8%程度。欧米人に比べて、音声入力への苦手意識は高い。
そんな中で、なぜHOMMAはスマートホームのターゲットをアメリカのみに絞るのか。本間がアメリカで暮らしていることや、少子高齢化の日本は今後、住宅市場が縮小傾向にあることが挙げられるが、「日本の住宅はすでに高度に工業化されている」と本間は強調する。
注文から設計までを住宅メーカーに一任する日本とは異なり、アメリカでは設計(アーキテクト)と建築(ビルダー)に明確に別れている。新築住宅を購入する場合はまず図面を引いてもらい、そこからホームビルダーに建築を依頼するため、購入を決めてから実際に家が建つまでに2〜3年ほどかかるという。
家具もカスタムメイドが基本。キャビネットを頼んでも素材が届くまで2カ月かかり、組み立てに1カ月かかることも珍しくないという。
一方で、日本はキッチンの設備すらも既成のものを組み込むことで、高精度な設備を安定的に、それも短期間で納品できる。HOMMAでは日本製品を使用することで、スピードの遅さ、品質の不安定さといったアメリカの住宅業界の欠点をカバーするのだという。