そうした中、米シリコンバレーでスマートホーム市場を開拓している日本人起業家がいる。 HOMMA,INCの本間毅だ。本間は学生時代に起業し、事業を売却。その後、ソニーや楽天で新規事業の立ち上げなどを経て、2016年に米シリコンバレーで同社を設立した。
2018年7月31日、日本の住宅関連企業(サンワカンパニー、パナソニック エコソリューションズ、ヤマハ・コーポレーション・オブ・ アメリカ)との連携でプロトタイプ型住宅の建設を行うプロジェクト「HOMMA ONE(ホンマ ワン)」を発表。
2019年夏にはカリフォルニア州ベニシアにプロトタイプが完成する予定だという。以降はシリコンバレー近辺を中心に、2022年までに100戸の建築を目標にしている。
なぜ、日本ではなくアメリカでの事業展開に踏み切ったのか。また日本とアメリカでスマートホーム市場の状況はどう違うのか。来日中の本間に取材の機会をもらい、話を伺った。
スマート家具前提で設計する「住宅版テスラ」
まずはHOMMAのビジネスについて紹介しよう。彼らのビジネスは、わかりやすくいえば「住宅版のテスラ」だ。
テスラは、自動車業界という長く伝統ある産業に、テクノロジーを武器にしてイノベーションを起こしている。それを住宅業界で実現しようと考えているのがHOMMAだ。
HOMMAは個人単位での建設の注文は受け付けず、コミュニティ単位での販売を専門としている。これにより、共通サービスやインフラ面でのスケールメリットをユーザーに提供できるようになる。
では、HOMMAはどのように住宅業界にイノベーションを起こそうとしているのか──本間は、3つのポイントを挙げる。
1つ目はデザイン。HOMMA ONEで提供する住宅の外観はアメリカでは高価なモダンデザインを予定している。本間は「既存のホームビルダーはミレニアル世代よりも上の世代をターゲットに据えているため、デザインを変えることはしない。そのため、アメリカにはデザインにこだわった住宅はほとんどない」と言う。
アメリカで人気の高いモダンデザインだが、現状はフルオーダーでしか購入できず、若者にはなかなか手が出せない。しかし、HOMMAはコミュニティ単位での開発によって、ミレニアル世代でも購入可能な価格での提供を目指していく。