ーその多様な人事部を率い、企業を人事の観点から戦略的に考える役職として「CHRO(最高人事責任者)」が注目を集めています。CHROが果たすべき役割とは?
チャラン:CHROの仕事で最も重要なのは、CEOが率いる経営陣の一員として、4半期ごとに社員のパフォーマンスを“診断”し、問題点を洗い出すことです。そのためにもCEOは、CHROとCFOの3者による定期的な会合「G3(三頭体制)」を設置することが大事です。
この会合を通じて、業績の分析のみならず、組織内の強みと弱みや必要なリソースについての考察、将来の経営戦略について考えなくてはいけません。G3はいわば、「組織のレントゲン装置」の役目を果たすのです。
また、CHROは未来を見据えて組織づくりをしていく必要があります。どのような人材が必要か、どういった人材を囲い込むことが大切か―。現在の人事部は、人事異動や福利厚生、事務作業、社内アンケートなどの作業に追われ、自社のビジネスを戦略的に考える余裕がありません。人事責任者は戦略を考えるためにも、給与管理や事務作業などを、部下や経理などの他部署、オートメーションに移譲するべきでしょう。
CHROの役割の強化と「G3」の設置は、縦割り型組織の課題を洗い出すうえでは大きな意味を持つのはまちがいありません。これはアメリカに限らず、日本など世界中の企業で有効な方法です。
ラム・チャラン◎経営コンサルタント。GEやノバルティス、3M、タタ・グループなどのコンサルタントを務めてきた経営戦略の世界的権威。ハーバード・ビジネス・スクールやノースウェスタン大学で教鞭を執ったのち、現職に。リーダーシップや経営に関する著書は累計200万部を超えている。近著に『取締役会の仕事』(日経BP社刊)、『これからの経営は「南」から学べ』(日本経済新聞出版社刊)など。