ひと昔前の専門家は会社員に、「自分に正直」になることこそ、職場で輝きキャリアをステップアップする秘訣だとアドバイスした。だが、今は違う。それどころか、新たな調査によればこうした考え方は、事実というより幻想だ。
会社員には、本当の自己表現を二の次にし、職場の規範に順応することが必要な時がある。現代の職場では、本当の自分という真正性よりも、プロ意識や、対立回避、キャリアの前進を優先させる必要があるのだ。
キャリアの成功をつかむなら、「自分らしさ」より「最高の自分」を目指そう
率直に自分の考えを話し、本当の個性を発揮することは、職業的成功の鍵として称賛されがちだ。しかし、Hogan assessments(ホーガン・アセスメンツ)の新たなデータによれば、職場における真正性の価値は、事実というより幻想だ。「真正性」の追求は多くの場合、マイナス要因となりかねない。ホーガン・アセスメンツの専門家はむしろ、職場での成功は、真正性と、戦略的な自己プレゼンテーションのバランスの上に成り立つと考えている。
彼らによれば、本当の真正性が意味するところは、自分の信念、感情、個性に完璧に符合するように行動することだ。しかし、現実には人は幼少期から、自分の行動を周囲の期待に一致させるようフィードバックを受け続ける。家庭でも、学校でも、そしてのちには職場でも。
その結果、人は自分の行動を、上司や同僚の期待、さらには職業的規範に従って調整するようになる。そのままの自己表現よりも、周囲に好印象を与えるかどうかや適応力を優先させるのだ。ホーガン・アセスメンツの調査によれば、人が職場で「真正」だと感じるのは、誰にも気を遣わず本当の自分を表現しているときよりも、むしろ、社会的に望ましい形で行動している時だという。
ホーガン・アセスメンツの最高科学責任者(CSO)ライン・シャーマンによれば、職場で本当の自分をさらけ出すことは、失敗への近道だという。「自分らしくあるというのは、他者に配慮せず、自分の考えや欲求に忠実になるということだ」と、シャーマンは述べる。「一方で、最高の自分でいるというのは、自分の行動が他者にどんな影響を与えるか、その行動によってどんな評判が培われるかといったことも考えることだ。本当の自分に正直であろうとするよりも、最高の自分でいようと努めることにリーダーは力を注ぐべきだ」。