明確なコミュニケーションの取り方を理解することは、キャリア成長の起爆剤となる。効果的なコミュニケーションを取る人は、常に優れたリーダーとして認識される。逆に、コミュニケーション能力が低いと信頼がたちまち失われ、成長の可能性が制限される。
Microsoft(マイクロソフト)の調査によると、働く人は勤務時間の57%を会議やメール、チャットに費やしているという。自らの考えをいかに理路整然と説明できるかは、肩書きに関係なく組織で働く人の生産性と評価に直接影響を及ぼす。デジタルツールを積極的に活用する時代では、言葉のトーンが正確に伝わらないことも多い。そうしたなか意図的な言葉選びが、目立たないが確かな差別化要因となっているのだ。
高い成果をあげているプロフェッショナルの会話の進め方や注意の引き方を分析した結果、5つの言葉が強力なツールとして浮かび上がった。これらは流行語ではなく、周囲の印象を左右するさりげないシグナルだ。
言葉その1「なぜなら、〜ので」
社会心理学者エレン・ランガーの研究によると、誰かに何かを依頼する際の文言に「なぜなら」という意味の言葉を付け加えると、理由が比較的弱いものであっても、相手が行動に移す割合が3割以上も増えるのだという。これは、人が根拠に反応するためだ。なぜそれが重要なのかを、理解したいのだ。
「会議は別の日に開きましょう」と言う代わりに、「全員が集まればより完全なデータが得られるので、会議は別の日に開きましょう」といった言葉にしてはどうだろうか。この小さな変化が指示を戦略的な決定へと変え、あなたへの評価を「思慮深い人」にする。
この手法は、文面でのやり取りにも当てはまる。メールで「今日中に報告書を送ってください」と催促するのではなく、「明日のプレゼン準備に必要なので、今日中に報告書を送ってください」という文言にする。背景を説明することで相手の行動が促され、あなたは全体像を捉えている人物として見なされるようになる。
言葉その2「一緒に」
従業員のエンゲージメントとは、仕事や職場への貢献、熱意を表すもの。その形成において、言葉は重要な役割を果たす。米調査会社のGALLUP(ギャラップ)によると、低いエンゲージメントは世界経済に年間推定8兆9000億ドル(約1340兆円)もの損失をもたらしている。この額は世界の国内総生産(GDP)を合計した額の9%にあたる。つながりや協働の意識を育むことは企業文化に良いだけでなく、業績という点でも欠かせない。
「あなたにこの仕事をやってほしい」と言うよりも「一緒にこの仕事に取り組みましょう」と言う方が、協働と責任の分担につながる。リーダーであろうとそれに従う側であろうと、「一緒に」という言葉を使うことで、一丸となって取り組める。
文面によるやり取りでは、「私が提案書をまとめているところです」という表現から、「皆の意見が反映されるよう、一緒に提案書をまとめているところです」という表現に変えることで、協調性を示すことができる。 個人の取り組みを、同僚が支援・促進してくれそうな「みんなの成果」に変えることができる。