オープンソースAIコミュニティで知られるHugging Face(ハギング・フェイス)は4月14日(米国時間)、オープンソース人型ロボットを手がけるPollen Robotics(ポレン・ロボティクス)を買収したと発表した。米国と中国が人型ロボット関連のスタートアップやイノベーションで世界をリードするなか、それ以外の国々にとっては朗報といえる。
ハギング・フェイスはXで次のように投稿している。
「オープンソースのロボットを世界に広めるため、ポレン・ロボティクスを買収することを発表できてとてもうれしく思います。テスラからレミ・カデーヌが参加して以来、LeRobotHF(ルロボットHF)やHugging Face Hub(ハギング・フェイス・ハブ)のおかげで、当社はオープンロボティクス分野で最も広く使われるソフトウェアプラットフォームになりました。今回は、実際にオープンソースの人型ロボットを出荷している数少ない企業のポレン・ロボティクスと手を組むことで、さらに一歩先へ進もうとしています!」。
ロボットに組み込まれたAI「フィジカルAI」は7000兆円規模に?
ポレン・ロボティクスが現在提供している「Reachy 2」(リーチー・ツー)は、7万ドル(約1000万円)で購入できる人型ロボットだ。この発表点では歩行機能がなく、車輪付きの移動ベースを装着するか、固定された状態で使用する初歩的なモデルだ。ただし、複雑な物体を操作できる7自由度のロボットアームを備えており、各アームの持ち上げ可能重量は3キログラムとなっている。
Reachy 2はVR機器を用いた遠隔操作に対応しており、完全にオープンソースで、Python言語によるプログラミングが可能だ。複数のモデルが存在するが、現段階ではあくまでコンセプト実証的な位置づけである。Neura Robotics(ニューラロボティクス)の「4NE-1」やApptronik(アプトロニック)の「Apollo」、Figure AI(フィギュアAI)の「Figure 02」、テスラの「Optimus」、Agility Robotics(アジリティ・ロボティクス)の「Digit」など、すでに商業レベルに達しているモデルとは大きな差がある。また、Reachy 2によってポレン・ロボティクスが世界の人型ロボットメーカートップ16のリストに加わるわけでもない。
しかし、人型ロボットは飛躍的な進歩を遂げつつある。信頼できる業界筋によれば、人型ロボットは数十年ではなく数年レベルの短期間で労働力としての価値を大きく高めると予測されている。たとえばエヌビディアのCEOであるジェンスン・フアンは、ロボットに組み込まれたAIを「フィジカルAI」と呼び、これを50兆ドル(約7157兆円)規模の機会とみている。もしこの予測が現実化すれば、こうした技術を所有もしくは採用する国や企業は、そうでない国や企業に比べて大きな競争優位を得る可能性がある。
さらに、大量生産が進むことで労働コストがほぼゼロに近づくとすれば、現在の経済や社会のモデルは根本的に変容するだろう。