「夢を見ること」は人類が進化の過程で獲得した能力で、種として生き残るために不可欠なものであったことが、最新の夢研究と脳科学から明らかになった。
世界的に著名な脳神経学者で脳神経外科医でもあるラウール・ジャンディアル博士が、私たちの潜在意識の風景を探索し、なぜ人類が長年にわたり夢を見る能力を保持してきたのかを解説、夢の潜在能力を最大限に活用する方法を伝授する著書『夢を見る技術 最新脳神経科学が明かす、睡眠中の脳の驚くべき力』(ラウール・ジャンディアル著、橋本篤史訳、光文社刊)から以下、一部抜粋で紹介する。
夢全体の12分の1は性的なイメージをともなう
性的な夢は、人間の本質の一部である。抑えようと思って抑えられるものではない。また、更年期を迎えても、化学的去勢を行っても終わることはない。性欲が旺盛か否か、結婚しているかどうかも関係ない。性的な夢は誰もが見るものである。
世界で行われた人口調査によると、イギリス人の90パーセント、ドイツ人の87パーセント、カナダ人の77パーセント、中国人の70パーセント、日本人の68パーセント、アメリカ人の66パーセントが性的な夢を見たことがあるという。調査の範囲をセックスの夢だけでなくあらゆる種類の性的な夢に広げると、見たことがあるという回答は90パーセントを超える。これほどの普遍性を持つ夢は、悪夢をのぞいてほかにない。悪夢も性的な夢も、私たちが目覚めているときの生活に多大な影響を与えるが、これはおそらくそうなるようにできているからである。
ある推計によると、夢全体の12分の1は性的なイメージをともなっている。研究者によって意見は異なるが、性的なイメージのなかでとくに多いのは、上から順にキス、性交、官能的な抱擁、オーラル・セックス、自慰行為である。キスがもっとも多いことは驚くには当たらない。人間のさまざまな感覚に対応する大脳皮質の地図を作成したところ、舌と唇が異常に大きなスペースを占めていることがわかっている。
内容がキスであろうとそれ以上であろうと、性的な夢は決して無視できない存在だ。私たちは性的な夢を見ることで、快楽を感じたり、嫉妬に満たされたり、しばしば困惑したりする。以前のパートナーとの性的な夢にはどんな意味があるのか?
パートナーがほかの人との性的な夢を見た場合、どう考えたらよいのだろうか?
自分やパートナーの夢について心配すべきなのか?
夢は私たちの本当の欲望を表しているのだろうか?