性的な夢を引き起こすものは何か?
研究者たちは長年にわたり、覚醒時の行動と性的な夢の関連を追い求めてきた。彼らは性交渉の頻度や恋愛関係における満足度、嫉妬深さといった覚醒時のふるまいや性格について、アンケート調査を実施した。また、被験者に睡眠実験室で夜を過ごしてもらい、就寝前にポルノ雑誌やビデオを観てもらうことで、性的な夢を誘発しようと試みた。
その結果、意外なことが明らかになった。性的な夢は、セックスの回数や自慰行為の有無とは関係がなく、ポルノに接する頻度とも無関係だったのである。性的な夢を見るかどうかは、主に目覚めているときにどれだけ性的な空想にふけっているかにあった。
これがどれほど興味深いことか考えてみてほしい。性的な夢は私たちが起きているあいだ何をするかではなく、何を考えるかによって生じるのだ。
だが、なぜ性的な夢が日中の空想と結びつくのだろうか? そして、なぜ実際の性行動とは結びつかないのだろうか? ここで思い出してほしいのが、私たちの夢を作り出す原動力、イマジネーション・ネットワークである。覚醒時に想像力が豊かで空想にふけりやすいほど、創造的な夢を見る可能性が高くなる。同様に、覚醒時に性的な想像力が豊かであるほど、睡眠中に性的な夢を見る可能性も高くなる。
しかし、日中の空想と性的な夢には重要な違いがある。日中に空想しているときは、性的衝動を抑えるエグゼクティブ・ネットワークが性的な思考を抑制しているのだ。こうした抑制作用は、夢を見ているあいだは消えてなくなるため、性的な夢は非常に創造的で探究的なものになる。
日中の空想が実現し得ない性的願望を表したものだとすれば、性的な夢は淫らな思考実験だ。夢のなかでは性転換したりバイセクシャルになったり、日中には想像もできないようなことが起こりうる。
これが、ジークムント・フロイトが言及した潜在的な欲望の表れかどうかは断言できないが、私たち人類の存続のため、性の柔軟性と独創性がある種の認知的なプラットフォームとして発現した可能性はある。
先述したように、夢のなかでの〝ありえない展開〞は人類の適応力を高めるのに役立っているのかもしれない。生存のために創造性や復活力が求められるような予期せぬ出来事に対応するため、準備を整えているのだ。創造性と探究心に満ちた性的な夢は、私たちの欲望に柔軟さをもたらし、子孫を残すための準備を促している。私たちの祖先は集団の半数が病気や外敵によって死亡したときに備え、性的な夢を通じて部族内で新たな関係を築く準備をしていたのかもしれない。
ここから、性的な夢が身近な人物に焦点を当て、それ以外にはあまり関心を示さない理由が明らかになる。すでに述べたとおり、性的な夢に登場する人物の多くは私たちが現実の世界で関わる人々だが、夢の中での関係性は現実とは異なるものであることが多い。
このように、性的な夢は私たちの実際の欲望を超えるものであり、欲望そのものを具現化したものといえる。性的な夢は私たちの性的衝動の対象範囲を広げ、性を探求させ、性的関心に柔軟さを与える役割を果たしている。これは、生物としての最優先事項が生き残ってなるべく多くの子孫を残すことであることを考えれば合点がいく。


