英語学習に時間とお金を費やしても、実際の英会話で成果を感じられない——。そんな悩みを抱えるビジネスパーソンは少なくない。
文部科学省のデータによれば、日本の英語教育は年々強化されており、TOEICスコアの平均点も徐々に上昇している。しかし、現場の声を拾うと、「スコアは高いけれど話せない」「会議で発言できない」といった悩みは依然として根強い。
このジレンマに対して、「試験英語から始めるのではなく、まず“シンプルな英語を話す力”を育てるべき」と提唱するのが、元英検面接委員であり、英語学習関連書籍や教科書19冊以上の著者であり、「Simple English/シンプルイングリッシュ®」を日本で初めて提唱した酒井一郎氏だ。
酒井氏が提唱するのは、「Easyモード英語攻略法」。特徴は明快だ。難しい単語や文法にとらわれず、シンプルな英語で「話す力」を先に育てる。そのうえで英検やTOEICといった試験に取り組むことで、試験も会話も同時に効率よく習得できるという。
以下は、酒井氏の寄稿である。
「試験英語で高得点」のワナ
まずは、英語学習者A氏の例を紹介します。
A氏は、まずは英検準一級を目指しました。
単語を覚え、文法を学び、試験対策に励んだ結果、見事に合格。
次はTOEIC。
リスニング対策を徹底し、長文読解のスピードを上げ、スコアは900点超え。「すごい!」「英語できるね!」と周りからも評価されるようになった。でも——。実際に外国人と話そうとすると、言葉が出てきません。
頭の中では文法を考えてばかりで、会話にならない。
焦れば焦るほど、頭が真っ白になる。「こんなはずじゃなかった……」。
試験では高得点が取れるのに、英語が話せない。

そのときようやく、本当に必要だった英語の学び方に気づいたのです。
「シンプルな英語」を学ぶことが先だった、と。
「完璧な英語を話そうとするのをやめる」ことから
英語の試験に合格すれば、英語が話せるようになると思っていました。
でも、実際はスコアが上がるほど、話せない自分に苦しむことになったのです。
「正しい文法を使わなければ」
「発音を間違えたら恥ずかしい」
「適切な単語が思い浮かばない」
そんなプレッシャーが頭を埋め尽くし、言葉が出てこない。
試験英語の勉強ばかりしていたせいで、間違えた英語を話すことを恐れてしまう癖がついていました。
しかし、A氏はふと気づいたのです。
シンプルな英語なら、試験のルールに縛られず自由に話せるんじゃないか? 完璧ではなくても、短いフレーズで伝えられるようになれば、自然と英語に対する抵抗がなくなるのではないか?
そこでA氏は試しに、「完璧な英語を話そうとするのをやめる」ことから始めたのです。
- 文法を気にせず、知っている単語だけで話してみる。
- 短くてシンプルな文で伝えることを意識する。
-「正しく言う」よりも「伝わること」を優先する。
すると——。
驚くほど、英語がスムーズに口から出るようになったのです。頭が真っ白になることも減り、少しずつ会話が続くようになりました。
