性的な夢もまた想像力の表れである
人間関係が性的な夢に及ぼす影響について調べたところ、独り身の男性のほうが恋人のいる男性よりも性的な夢を多く見ることがわかった。また、女性はパートナーがほしいときや恋愛感情が高まったときに性的な夢を見る傾向があるが、男性は同じ状況でそうなることは少ない。しかし、男性と女性で共通する点もある。ほぼすべての人が、夢のなかで浮気をするのだ。
これについて、どう考えればいいだろう？ 夢の創造者である私たちは、毎夜くり広げられるドラマのキャスティングや舞台、演出を担当している。私たちが見る夢は、自分自身が作り出した官能的な作品である。パートナーを裏切る夢は浮気の願望か、少なくともその素地があることを示しているのだろうか？ 性的な夢が性欲の表れでないとしたら、いったい何を意味しているのだろうか？
これらの疑問に答えるには、まず性的な夢がどんなもので、どのようにして生じるのかを理解する必要がある。
先にも述べたとおり、すべての夢は私たちの想像力とイマジネーション・ネットワークの産物であり、覚醒時のルールや論理に縛られない視覚的で感情的な物語である。夢を見ているあいだ、エグゼクティブ・ネットワークは休止状態にあるが、その一方イマジネーション・ネットワークは解放されており、私たちの記憶や日常生活で出会う人のなかから緩やかな連想や結びつきを探し出す。新しい視点から物事を見ることで、過去の経験をより深く理解し、将来の展望を見通せるようになる。夢のなかでの自由な心のありようは、目覚めているときには想像もつかないようなシナリオの追求を可能にする。私たちはそれによって、人生で出会う人々を思いがけない形で、あるいは性的な視点で見るようになる。
夢を見ているあいだは論理的思考を担うエグゼクティブ・ネットワークがオフになっているため、私たちは性的な想像力を抑えることができない。その結果、性的な夢は分別や道徳から逃れ、ときには自分の良識をも超えた内容になる。目覚めているときには禁じられていたり想像も及ばなかったりするような性的な接触やシナリオも、夢のなかでは可能になる。
研究者がまとめた報告によると、私たちは夢のなかで束縛から解放されている。性的な夢が現実の性生活を忠実に再現することはほとんどなく、実生活でパートナーがいたとしても、夢のなかではめったに登場しない。かわりに、バイセクシャルなどふだんとはまったく異なる性的交流への関心が高まることが一般的である。
夢のなかでは誰とでも自由に関係を持つことができる。そのような自由が与えられた場合、私たちが求めるのはいったいどんな人物だろうか？
意外に思うかもしれないが、性的な夢で理想的なセックスの相手が現れることはない。私たちが作り出すのは絵に描いたような美男美女ではないし、極上の夢物語にふさわしい特徴を備えた人物でもない。通常性的な夢に現れるのは、目覚めているときは何とも思わない（あるいは、抵抗感さえ抱くような）人たちである。
具体的には、元パートナー、上司、同僚、友人、知人、若いころの家族など、自分にとって身近な人物が登場することが多い。事実、性的な夢で身近な人が現れるケースは五件中四件にのぼり、夢のなかで性的な接触が起こるのは本人にとってなじみ深い場所である。
