北米

2025.04.07 13:30

トランプは西欧の敵:伊藤隆敏「格物致知」

Chip Somodevilla / Shutterstock.com

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2月28日、ウクライナ大統領のゼレンスキー氏は、ホワイトハウスを訪問して、鉱物資源の開発の権利の合意に署名するはずだった。署名式に先立ち、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領、バンス副大統領による会談がメディアに50分間も公開された。最初の40分間は和やかだったが、最後の10分間で、バンス副大統領が、「アメリカへの感謝が足りない」と、大声でゼレンスキー大統領を叱責する事態となった。予定されていたウクライナの鉱物資源の権益(を米企業に付与する)合意文書への署名は見送られ、トランプ大統領の指示で、ゼレンスキー大統領は手ぶらでホワイトハウスを去ることとなった。

激論のきっかけは、バンス副大統領の、今は「外交が重要だ」という発言だ。ゼレンスキー大統領は、「2019年にロシアと協定を結んだが、プーチンは、2022年に侵略した。プーチンは25回も合意を守らなかった。あなたの言う外交とは何か」と問うた。バンス副大統領がさらに大声で、「大統領執務室まで来て大統領に反論するのは、非礼だ」と罵った。

「ウクライナは前線に送る人員が足りていない。問題を抱えているのは明らかだ」とすると、ゼレンスキー大統領は、戦争中の国はどこも問題を抱えている。アメリカだって、今は、大西洋の対岸なので、問題を感じないかもしれない。しかし、将来、あなた方ですら問題を感じるようになるだろう、と主張した。これが、トランプ大統領の逆鱗に触れた。アメリカがどのように感じるかを我々に言ってくれなくても良い。さらに続けて、トランプ大統領が「あなたにとって状況は良くない。カードを何ももっていない。鉱物権益の合意に署名すれば、カードをもつ」と圧力をかけた。ゼレンスキー大統領は、「カードゲームをしているのではない」とつぶやくも、さらに、トランプ大統領は、「おまえは第三次世界大戦を引き起こそうとしている」と、顔を赤らめて叱責するという激論となった(The TelegraphのYouTubeへの投稿が聞き取りやすい)。

トランプ大統領、バンス副大統領によるゼレンスキー大統領の叱責は、「いじめ」ではないか、と思うほどだ。確かに、ゼレンスキー大統領は、もう少し慎重な対応が必要だったのかもしれない。通訳をいれて、質問と回答の間の時間を稼ぐとか、トランプ大統領の完全な間違った認識を正すだけにとどめることのほうが良かったのかもしれない。バンス副大統領と「外交」の意味で議論したり、トランプ大統領にアメリカが将来どう感じるかのレクチャーをたれる(とトランプは受け取った)のはやりすぎだった。

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