大谷はさらに、競技外収入で年間1億ドルを達成した史上4人しかいない現役アスリートの仲間入りを果たしたという点でも、稀有な存在となった。他3人は、2021年に自身のウイスキーブランド「Proper No.12」を売却して1億5800万ドルを得た総合格闘家のコナー・マクレガー、2009年に1億500万ドルを稼いだ男子ゴルフのタイガー・ウッズ、2020年に1億ドルを稼いだ男子テニスのロジャー・フェデラーである。
野球がマーケティングの機会で他のメジャースポーツに遅れをとっている点を考慮すると、大谷のフィールド外収入額はいっそう印象的だ。MLBは厳しい試合日程に加え、ファン層の高齢化と地域密着型の特性が響き、エンドースメント契約はどうしても不足しがちなのだ。
スポンサー収入で昨季推定6000万ドル(約90億円)を稼いだ大谷以外では、ニューヨーク・ヤンキースの外野手アーロン・ジャッジとフィラデルフィア・フィリーズの一塁手ブライス・ハーパーが、それぞれ推定800万ドル(約12億円)でフィールド外収入ランキングの上位に付けている。株式配当金を除けば、デレク・ジーターが引退した2014年に稼いだ900万ドルに届きそうな選手は他にいない。
しかし大谷は、米国ではニューバランス、Beats by Dr.Dre、ファナティクスなど、日本ではコーセー、興和、セイコーなど、計20社以上とスポンサー契約を結んでいる。野球人気の高い日本市場では、スポンサーの費用対効果が米国とまったく異なるためだ。熱狂的な大谷ファンのおかげで、試合中継の視聴率は米国の視聴者数を上回る。大谷の顔は日本中の看板や商品パッケージに起用され、その規模は米国のアスリートとは比較にならない。
日本人アスリートを中心に支援するスポーツエージェンシー、Gifted Existence Management(GEM)を共同設立した杉浦大輔・代表取締役は、多くの日本企業が海外市場に進出しようとしている中で「大谷は今、グローバル企業になるための高額チケットなのだ」と説明する。だからこそ、スーパースターの法外なスポンサー料にも応じようとするパートナー候補企業が後を絶たない。日本の経営者の多くが野球ファンであることも、大谷にアピールしやすい点の一つかもしれない。先週、東京ドームで行われたドジャースとシカゴ・カブスのMLB開幕シリーズを観戦した杉浦代表取締役は、大谷に会うのは「企業の社長よりも難しいと思う」と付け加えた。
大谷は2年連続で総収入ランキング首位となったが、2026年には今季末でFA権を取得するトロント・ブルージェイズの一塁手ウラジーミル・ゲレロJr.の挑戦を受けることになるかもしれない。だが、ソトについては心配しなくてよいだろう。ソトの巨額の契約ボーナスは、スネルの5200万ドル(約78億円)のボーナスと同じく1回限りの支払いとなる。
野球選手の収入に関して言えば、大谷はまさに別格である。