サイエンス

2025.03.27 18:00

人類滅亡、マスクが唱える終末論に進化生物学者が反論

AtlasStudio / Shutterstock

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イーロン・マスクは、ジョー・ローガンによる最新インタビューのなかで、火星都市の建設は、人類文明の未来を確かなものにするために必要なステップだと語った。マスクによれば人類は、「大人用おむつを履いたまま死に絶える」危機に直面しているという。

「文明はこの先、ある種の岐路に立つが、我々は、そうした点に行き着く前に、火星に自己完結した社会を築けるだろうか? 岐路というのはこういうことだ。一つの道の先には戦争、たぶん核戦争のようなもの、あるいは隕石衝突が待っている。もう一つの道の先には、大爆発の代わりに、大人用おむつを履いて泣き言を言いながら文明ごと死に絶える運命がある」

「私は(火星入植が)可能だと思う。【略】我々は、文明が消滅したり衰退したりする前に、意識の光が火星まで確実に届くようにすべきだ。すべては、地球の技術水準が、火星に宇宙船を送れないレベルにまで低下する前に行われる必要がある。つまり、この先とてつもなく破壊的な戦争や天災が発生するか、あるいは、出生率が下がりすぎて、大人用おむつを履いて泣き言を言いながら滅亡する前に、ということだ。(後者の)可能性は、多くの国々にとってリアルなものだ」

続いてマスクは、日本や韓国など、一部の先進国における極端に低い出生率を指摘した。

「現在の出生率では、韓国の人口は、3世代のうちに現在の約4%に激減する【略】いや、もっと少なくなるかもしれない。(韓国の出生率は)人口置換水準の約3分の1だ。つまり3世代後には、現在の人口の27分の1、すなわち3%になる」

人口動態に関するマスクの見通しは悲観的で、彼は以前からこのような見解を語ってきた。だが、彼の懸念に根拠はあるのだろうか? 

筆者は、長年にわたって個体群動態の研究に携わってきた進化生物学者だ。その視点から、3つのポイントについて指摘したいと思う。

1. 世界人口は、過去100年間で爆発的に増加してきたし、今後も増加は続く

2022年、世界の人口は、歴史上初めて80億人を突破した。1950年にはわずか25億人、2010年でも70億人だったことを考えれば、これは驚愕すべき数字だ。

それだけでなく、世界人口の増加は今後も続く。国連の予測によれば、世界人口は2050年までに約100億人を超える見通しで、2080年代半ばには105億人に達するとされる。

おそらくは、人口減少よりも人口増加の方が、はるかに差し迫った問題だろう。

2. 人口増加のスピードは鈍化しているが、それは人類滅亡を意味しない

人類史の大半を通じて、人口増加率は、ゼロをわずかに上回る程度だった。正確に言えば、古代から産業革命の開始まで、世界の人口増加率の平均は、年に約0.04%だった。

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翻訳=的場知之/ガリレオ

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