「我々は今、人口減少が加速へと向かう、その入り口に立っている。2025年は人口の調整局面から減少局面への移行期です」
現在1億2397万(2024年6月、総務省)を数える日本の総人口は、07年の1億2777万人をピークに、5年で0.15%減とゆるやかに減少を続けてきた。それが、20年代に入って加速し始め、25年を境に減少幅は0.5%を超える見込みだ。それに伴って日本経済が新しい局面に入ることから、リクルートワークス研究所の坂本貴志は「人口減少経済」を25年のキーワードに挙げる。
バブル崩壊後から続いた人口調整局面では、女性の社会進出が進んだ影響などで労働力が余り、賃金や物価は低迷してきた。しかし人口減少局面に入ると、賃金や物価は上昇する。
「実際に10年代半ばごろから“人が足りない”と叫ぶ経営者が増え、地域企業を筆頭に人手不足は深刻化しています」
では、日本企業にはどのような変化が求められるのか。坂本は「人口減少局面においては、経済規模の縮小といかに向き合うかが重要」と言う。OECDによると、2010年から10年間の日本の実質GDP成長率(年率換算)は、先進6カ国(米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、日本)の中で再下位となっている。しかし、日本の労働生産性は堅実に上昇していることから、坂本は「労働投入量の減少」がその原因であると考える。つまり、現在の日本の人口動態から見て労働投入量は減少し続けるため、この先の経済成長率の鈍化は既定路線だ。企業は少ない労働力で事業を回さざるをえなくなる。
その鍵となるのが「テクノロジーの活用」と「サービス内容の取捨選択」だ。すでにいくつかの企業で経営改革は始まっている。坂本は、事例として神奈川県の老舗旅館を挙げる。倒産寸前だったこの旅館だが、エンジニア出身の息子が経営を引き継ぎ、旅館管理システムを開発・導入。これを活用して顧客管理と勤怠管理を行った結果、業務の効率化と労働環境の改善に成功し、3年で経営を立て直した。