アート

2025.04.03 14:15

「見る力」を鍛える。ビジネスに活きるアート鑑賞とは?

Kenneth Noland: Paintings 1966–20061F; Azabudai Hills Garden Plaza-A5-8-1 Toranomon, Minato-ku,TokyoMarch 7–May 6, 2025Photography courtesy Pace Gallery

Kenneth Noland: Paintings 1966–20061F; Azabudai Hills Garden Plaza-A5-8-1 Toranomon, Minato-ku,TokyoMarch 7–May 6, 2025Photography courtesy Pace Gallery

ビジネスの現場では、ロジカルシンキングやデータ分析が重視される。しかし、現代の経営者やイノベーターが求められるのは、数字や理論だけでは測れない「直感力」と「創造性」だ。では、それらを鍛えるにはどうすればいいのか?

そのヒントが、東京・麻布台ヒルズのPace ギャラリーで開催されているケネス・ノーランドの個展「Paintings 1966–2006」展にある。

ケネス・ノーランドは、20世紀アメリカの抽象画を代表する画家の一人。彼の作品は、「形と色」という極めてシンプルな要素で構成されながらも、見る者に強い印象を与える。それはなぜか? そして、そのアプローチはビジネスにどう応用できるのか?

本展のトークイベントで語られた専門家の視点から、「アートの見方を変えると、ビジネスの思考も変わる」理由を考えた。

色と形に注目して「観察力」を鍛える

ノーランドの作品は、円やストライプ、山形(シェブロン)などの幾何学的な形と鮮やかな色彩が特徴的だ。一見するとシンプルなデザインに見えるが、実際に展示会場でじっくり向き合うと、その色の配置や形のバランスが微妙に変化し、作品ごとに異なる印象を生み出していることに気づく。

Kenneth Noland: Paintings 1966–20061F; Azabudai Hills Garden Plaza-A5-8-1 Toranomon, Minato-ku,Tokyo March 7–May 6, 2025Photography courtesy Pace Gallery
Kenneth Noland: Paintings 1966–20061F; Azabudai Hills Garden Plaza-A5-8-1 Toranomon, Minato-ku,Tokyo March 7–May 6, 2025Photography courtesy Pace Gallery

横浜美術館の蔵屋美香館長は、3月7日に開催されたトークイベントでこう語った。「画面の左上から数センチずつじっくり見ていくと、作家の筆使いや色の変化が見えてくる。漠然と見ているとわからないことも、細部に目を向けることで作家の意図を少しずつ感じられるのです」。

ビジネスにおいても同じことを我々は行っていないだろうか。マーケットのトレンドを読む、顧客の本当のニーズを探る、競合との差別化ポイントを見極めるといった工程は、すべて観察力によって成り立っている。

色と形が持つ意味を読み解くことは、表面的な数字やデータだけでなく、細部の変化を詳細に観察し、敏感に察知することと同様だ。ノーランドの作品をじっくり観察することは、変化を察知するための有効なトレーニングになる。

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文=青山 鼓

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