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2025.03.29 15:00

三宅香帆が50代に望む「成功より失敗を語ってほしい」

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『Forbes JAPAN』2025年5月号の第二特集は、米『Forbes』注目企画である「50 OVER 50」の日本版。「時代をつくる『50歳以上の女性50人』」たちのこれまでの軌跡と哲学、そして次世代へのメッセージを聞いた。

「50 OVER 50」特集における最後のコラムとして、異なる世代からの議論設定、提言を企画した。31歳の文芸評論家、三宅香帆が50歳以上世代へ望むこと、そして同世代に贈るエールとは何か。


2024年、発売直後から大きな話題となり30万部超のベストセラーとなった新書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』。日々、忙しく働かざるをえない人々が読書とどう向き合ってきたのかを歴史的に紐解く同書を著した文芸評論家の三宅香帆は、1994年生まれの31歳。働きながら本が読める人生を送りたい、をモットーとし、「全身全霊で働く社会」からの脱却を提案する三宅に、これからの世代が必要とするロールモデルについて聞いた。

──働き方、ジェンダー、さまざまな意味で価値観のアップデートが日々なされています。必ずしも上の世代のまねをすればいいわけでもないけれど、ロールモデルは欲しい。そんな意見に対して三宅さんはどう思いますか。

三宅:完璧なお手本を探すというよりも「かっこいい」と思える部分を探す、という考え方をしてみるのはどうでしょうか。私は先輩の姿を「因数分解」しながら観察することが大事だと思います。例えば、ある女性管理職の方が仕事と家庭を両立していて素晴らしいと感じたら、その「両立」の具体的な部分、例えば時間管理術や周囲との協力関係などを細かく聞いてみたり、分析してみたりする。

一方で、その人の価値観や考え方で自分に合わない部分があれば、その理由を掘り下げたり、「取り入れない」と決めてみる。自分に合う部分と合わない部分を切り分ける作業が重要で、そうすることで、自分自身の「かっこいい」の基準への理解も深まっていくはずです。

──合わない部分にも目を向けるというのは新鮮です。

三宅:私はむしろそちらのほうが重要だと思います。ロールモデルというと、一見、100%その人に共感してないとそう呼べないようなキラキラした雰囲気をまとった言葉でもありますが、すべての要素に共感したり憧れたりする必要はありません。むしろ「ここは共感できない」と感じる部分こそ大事だったりすることは往々にしてある。

フィクションやエンタメにもヒントはあります。セリフや場面にモヤっとしたら、批判したり見るのをやめたりする前に、その違和感がなぜ生まれたか? どうすれば解消していけるのか? と考えてみると、自分を見つめるひとつのフックになるのではないかと思います。

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インタビュー=南 麻理江(湯気)

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