起業家

2025.03.27 08:30

「着る医療機器」リライブウェア、200億円ヒットの秘密

佐々木貴史|りらいぶ

佐々木貴史|りらいぶ

Forbes JAPAN 2025年5月号は「新・ヒットの研究」特集。世の中で今、注目されている商品には、最先端のエッセンスが詰まっている。爆発的ヒット作の徹底分析と、次に来る消費トレンドの予測を通じて、これからのヒットの法則を探った。

出川哲朗のCMで話題となった機能性ウェアが、海外展開を始める。連続起業家として成功パターンを知る経営者による、ヒットの秘密は「温故知新」にあった。


「まだ山の2合目なので」。2021年の年間売上は1億8000万円だったが、今や単月の平均売上が13億円。まるで計画通りといった様子で、佐々木貴史は24年を淡々と振り返る。今期目標の200億円も現実味を帯びる勢いを見せている。

昨年2月に出川哲朗のテレビCMが放映されて話題となった機能性ウェア「リライブウェア」は、大谷翔平級の破壊力をもつヒットとなった。9月22日にTBS「がっちりマンデー!!」で取り上げられると、9月の売上だけで17億円を突破した。

昨年9月にニューヨークで開催されたヘルスケア会合「C3サミット」では講演を行い、北米にも拠点を置く。上の写真は新たに発足したグローバル経営チームで、左はルルレモンをグローバルブランドに成長させたクリエイティブディレクターのロブ・ブレアだ。ブレアは、ナイキやレッドブルなど名だたるブランドのクリエイティブリーダーとして実績を重ねてきた人物である。

佐々木の右に立つマサー医師はカナダと米国で活躍するヘルスケア起業家であり、国際的なウェルネス企業の戦略アドバイザーでもある。

仙台在住で無名の63歳による苦節数十年の快進撃と見られがちだが、佐々木はリライブウェアがまだアイデアレベルのころから、「まずは100億円」と想定していた。彼なりの根拠があったからだ。

「私は仕組み屋なんですよ」

佐々木は自身をそう語る。これまで7つの事業を運営してきており、業種はバラバラに見えるが、「どんな仕事にも共通する仕組みがあり、その仕組み化をうまくできたら、事業はできます」と言う。

仕事の共通項は、集客、営業、契約、納品であり、「困っている人はいるのに、それを助けるサービスがない」という潜在ニーズを仕組み化して展開してきた。

例えば、不動産事業である。貸事務所を「起業家を育成する貸事務所」として集客し、助成金申請から宅配便の受け取りまで、起業家の相談にのる貸事務所事業にして成功した。また、人が亡くなった後の相続など、煩雑な手続きをワンストップで行う出張サービスを行った。

こうした事業のコツは「抽象度の上げ下げ」と言い、仕事の範囲を狭くせずに再定義することが重要だという。だから、彼は単なる仕組み屋ではなく、抽象度を上げて、「人を助ける仕組み屋」と自称する。

人助けを人生の中心に置いている理由は、彼自身、生まれつき体が弱く、学校に通うことも難しかったため、人に助けられて生きてきたことと、自身が能力開発を体得してきたことに起因するだろう。

その最終回答が「リライブシャツ」だ。

次ページ > 「温故知新」型の勝ちパターン

文=藤吉雅春 写真=宇佐美雅浩

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事