研究によると、「グラウンディング」という手法を使うと、皮膚コンダクタンス、呼吸数、脈拍や心拍などの主要な生理学的マーカーにおいて高かった覚醒度がすぐさま低下し、その効果はグラウンディングをやめた後も持続する。グラウンディングとは文字通り「地に足をつける」ことを意味する。
肉体が現在の時間軸に存在していても、心は過去や未来に飛んでしまいがちだ。感覚をグラウンディングさせると、意識を「今、ここ」に固定でき、ネガティブな思考が定着しにくくなる。
これらの知見は、感覚的な体験を通じた身体への働きかけが神経系に直接影響し、リラックスと安定感が促進されることを示唆している。
精神的なループを断ち切り、現実の具体的な対象に意識を戻すのに役立つ簡単なグラウンディング・テクニックを3つ紹介しよう。
・触れる:衣服、滑らかな石、宝石など、質感のあるものを手に持って、その感覚に集中する
・呼吸を意識する:ゆっくり深呼吸して、息を吸うときの空気の冷たさ、吐くときの温かさに注意を向ける
・グラウンディング:両手を机やいす、膝などに置き、面を軽く押さえる。てのひらの下にある固さを感じる
簡単により深く心をリセットできる「5・4・3・2・1」のエクササイズもある。
・目に見えるものを5つ挙げる
・感じられるものを4つ挙げる
・聞こえるものを3つ挙げる
・においがするものを2つ挙げる
・味のするものを1つ挙げる
3. どんな思考が感情を持続させているのか確かめる
ある感情が90秒以上持続するとき、それはもはや発端となった出来事に対する反応だけではなく、その出来事に付随する物語によって維持されている。人の心は必然的に経験したことの意味を理解しようとするが、しばしば誇張したり、意図を推測に基づいて解釈したり、最悪のシナリオに執着したりして、感情的な苦痛を長引かせる。
たとえば「メールが無視された。相手はきっと怒っているに違いない」という思考は不安の引き金になるし、「プレゼンに失敗した。みんなに無能だと思われたに違いない」という思考は自信をいっそう失わせる。いずれの場合も出来事そのものではなく、解釈が感情的苦痛を生み出している。