陳腐な言葉に聞こえるかもしれないが、これらの言葉は、服装とマインドセット(精神的な姿勢)の深い心理的なつながりを示唆している。多くの場合、このつながりは気づかれていない。あなたが何を着るかは、他者があなたをどう認識するかを左右するだけでなく、あなたが自分自身をどう認識するかにも影響を与える。これは、あなたが完全には理解していないかたちで、あなたの自信や行動、さらにはパフォーマンスに影響を与える。
一日中パジャマで過ごすのと、きちんとした服装をするのでは、どう違うかを考えてみて欲しい。おそらくは、無意識のうちに振る舞いが変化するはずだ。ファッション心理学者のドーン・カレン博士が提唱した「ドーパミンドレッシング(dopamine dressing:ドーパミンが出る服装を選ぶ)」という概念は、服と感情面のウェルビーイングのこうしたつながりに着目している。
ドーパミンドレッシングは、色彩心理学と自己知覚理論に根差している。特定の色や質感、スタイルを身にまとうことで「気分が良くなる」神経伝達物質であるドーパミンの分泌が促され、気分や自信が高まることを示唆している。
服装は、あなたのエネルギーを変え、世界との関わり方を方向づける力を持っている可能性がある。この現象の背景にある科学は、その日常的な影響力と同じくらい魅力的だ。
研究によれば、ドーパミンドレッシングがメンタルヘルスに与えるプラスの影響は2つある。
1. 何を着るかによって自己認識が変わる
自分がパワフルだと感じられる、自信を持つことができる、あるいは、きちんとしていると実感できる服を着ているとき、それは単なる服装の問題ではない。あなたの脳は実際に、服の象徴的な意味合いに反応している。私たちが着る服は、自分自身に対する見方や、さまざまな状況での振る舞いに影響を与える可能性があるのだ。ここで登場するのが「着衣認知(enclothed cognition)」という概念だ。着衣認知という用語は、ハヨ・アダムとアダム・D・ガリンスキーが『Journal of Experimental Psychology』の論文で提唱した概念で、服が私たちの心理的プロセスに与える影響を指す。