Adobe Fireflyがクリエイティブの多様化を促進
Adobe Fireflyを使ってカタログの素材からつくったクリエイティブと、背景画像をまるごとAIで生成した素材を用意して、各々の効果も事前に比べた。結果、CREATIVE BLOOM DISPLAY AdsのAIを使った画像の注視度やCTRの予測スコアは全面をAIで生成した素材の方が優秀だった。成果を受けて、AIにより生成した素材をベースに縦型を含むアスペクト比が異なるバナーや、静止画と動画両方のフォーマットでバリエーションに富んだ素材を揃えた。

Adobe Fireflyにはクライアントのコーポレートカラーを事前に学習させて、最適な画像をカスタム生成するモデルもある。石井氏は「Adobe Fireflyのツールは画像の生成精度や機能面でもめまぐるしいほどの速度で進化を続けている」と手応えを評価している。その上で、同社のクリエイティブチームには「とにかくAdobe Fireflyを使い倒そう」という指示を出しているという。

Hakuhodo DY ONEのクリエイティブチームでは、アドビのエキスパートを講師に迎えて定期的にAdobe Fireflyのワークショップも実施している。目的は「生成プロンプト力」を高めることにある。「現場のクリエイターがAIツールを活用するスキルは着実に上がっている。今後はAI活用を組織的に浸透させていく段階。生成プロンプトを使いこなす、いわば匠の技をナレッジ化して共有することも必要」と石井氏は課題を見据える。
アドビが今年の2月に発表したAdobe Firefly Video Model(ベータ版)にも石井氏は注目する。デジタルマーケティングを成功させるために動画広告の活用は欠かせないからだ。静止画と動画の両方に「商用利用できる生成AIモデル」であるAdobe Fireflyのツールを活用できれば、さらなる業務の「効率化と高度化」も期待できる。
例えば広告を出稿する側の企業が独自に生成AIに基づくクリエイティブツールを導入してしまうと、今後広告制作のプロフェッショナルの仕事が奪われることになるのだろうか。石井氏は「私たちにはさまざまな業種のデジタルマーケティングを積み重ねてきたノウハウがあり、その経験を元に最も適した提案ができる強みがある。プロフェッショナルならではの価値が生み出せる」と胸を張る。
さまざまなAIツールを巧みに使いこなすプロのクリエイティブワークにも今後さらに注目したい。
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