CREATIVE BLOOM DISPLAY Adsを駆使すると、「ビジュアル広告の注視点を解析して、構成をクライアントに提案するという、今までの広告手法にはなかった高度な仕事が生み出せる」と石井氏は説明する。
ビジュアル広告の構成は、従来はクリエイティブディレクターが経験則に基づいて行っていた。ビジュアル広告をAI解析にかけるという仕事の手順はひとつ増えるが、クライアントが求める効果は引き出しやすくなる。AI解析に基づくデータがあれば、クライアントとすり合わせるべきポイントが明確化され、コミュニケーションも円滑に進む。従ってこの場合はAIが仕事の効率化と高度化の両方に貢献していると言える。
AI PACKをフルに活用したトヨタ「AQUA」の広告戦略
AI PACKを構成するツールは、必要とするクライアントのニーズに合わせて個別に提供もできるが、直近で石井氏が手がけるトヨタ自動車のハイブリッドカー「AQUA(アクア)」のデジタルマーケティング展開ではAI PACKのツールをすべて活用した。
その中でAdobe Fireflyによるクリエイティブ制作の過程がユニークだった。
自動車メーカーの広告展開は従来はカタログの素材からデジタル広告をつくる手法が一般的に用いられてきた。ところがこのアプローチでは事前に制作できるバリエーションの数が限られ、AIツールを採り入れたデジタルプラットフォームの広告効果が最大化されない。
Hakuhodo DY ONEでは、2024年の4月から6月までの期間に同じトヨタ自動車のアクアを商材とするデジタルマーケティングを支援した。当時はカタログデータから制作した1つのバナー広告を3カ月間連続で配信し続けた。
石井氏は「カタログが完成しないと次の制作に取りかかれない、従来の制作フローでは後段に控えるデジタルマーケティングが余計な手間になる。今後はよりデジタルマーケティングに相応しく、なおかつプラットフォーマーが提供するツールにマッチするクリエイティブが求められる。単純にカタログの素材を少し味付けする手法では、効果に差が開いてしまう」と語る。
そこで、2024年末にスタートした第2期ではAI PACKを活用して競合他社の広告展開を分析し、Adobe Fireflyによりデジタルプラットフォームで「映える」ビジュアル素材を多数生成した。