2022年の調査では、泣いていた乳児の半数近くが5分間の抱き歩きで入眠した。そのときの乳児の心拍数や脈拍を測定すれば、よりよい寝かしつけのタイミングがわかるのではないかと考えた。当初、ベッドに置くと3分の1の赤ちゃんが起きてしまったが、抱き歩きの後に8分間の座り歩きを加えることで、起きる子を2割にまで減らすことができた。SciBabyの効果を30人の乳児の協力で300回実験したところ、5分間の抱き歩きで泣いていた乳児の84.4パーセントが泣き止み、8分間の抱き座りで658.4パーセントが入眠した。泣いている子ほど抱き歩きで早く寝つくこともわかった。

SciBabyは、現在、Android版を無料ダウンロードできる(iOS版は開発中)。これを利用するには、アプリをインストール後に研究参加に同意しなければならない。利用した際の赤ちゃんのデータが黒田研究室に送られ、今後の研究開発に役立てられるからだ。とくにベッドに置いたときに起きてしまう割合を小さくするなどの、寝かしつけのベストタイミングの推定に取り組むということだ。
SciBabyは乳児の夜間睡眠を評価する目的にも拡張できるとのこと。子どもの夜泣き睡眠が正常範囲なのかをはかる「客観的な指標に基づいて評価する方法」がほとんどないため、SciBabyで生体情報の測定や解析ができるようになれば、小児睡眠障害の診断に役立てられる可能性があると同研究室は話している。
このアプリで使用する心拍センサーは、赤ちゃんへの安全性を考慮して「Polar Verity Sense」に限定している。ただ、センサーがなくても「抱き歩き体験モード」での利用が可能だ。