ウクライナがデンマーク、オランダ、ノルウェー、ベルギーから計85機取得する予定となっているF-16は、戦前からのウクライナ空軍の戦力である旧ソ連製のミグやスホーイよりも格段に装備が優れている。ウクライナ空軍のF-16には、最初は米空軍の専門チームによって再プログラミングされたAN/ALQ-131に加え、PIDS+(パイロン一体型妨害手段投射システム、ミサイル警戒装置付き)とECIPS+(パイロン一体型電子戦システム、ミサイル警戒装置付き)というオプションもある。
PIDS+は、レーダーや赤外線で誘導されるミサイルを欺くチャフ(妨害用の金属片)やフレアを投射し、AN/AAR-60ミサイル警戒装置が付属する。ECIPS+は、チャフやフレアによるアクティブ防護を補完するパッシブ防護として、地上などのレーダーを無効化するAN/ALQ-162ジャマーを含む。こちらもAN/AAR-60が付属している。
これらの防護システムがあってもF-16が無敵になるわけではない。ウクライナ空軍はこれまでにデンマークとオランダから受け取った16機前後とみられるF-16のうち、すでに1機を失っている。このF-16は到着後間もない昨年8月、防空パトロール中に不可解な墜落をし、「ムーンフィッシュ」というコールサインで知られた著名なパイロット、オレクシー・メシが亡くなった。
米空軍の当局者は、AN/ALQ-131を搭載したF-16は「戦略的に重要でインパクトのある目的を達成するために、束の間にせよ局所的な航空優勢をもたらせるかもしれない」とは話していた。
ただ、F-16のこうした自己防御能力は持続できないおそれがある。ウクライナが現状、AN/ALQ-131の再プログラミングを米国にどの程度頼っているのかは不明だ。もし、これに関していまだに米国の助力を必要としているのであれば、ドナルド・トランプ大統領のもとで米国がロシアとより緊密に連携するようになるにつれて、ウクライナはそのうちこのレーダー妨害装置を適応させるのが不可能になるかもしれない。