米国がウクライナに背を向けるなか、欧州の支援諸国はウクライナの安全保障の穴を埋めるべく迅速に動いている。スウェーデン、リトアニア、アイルランドは、相当な額に相当する強力な防空システムを新たに供与する予定だ。なかでも、中立国のアイルランドによる装備の支援は最も驚きかもしれない。
スウェーデンはウクライナへの最新の支援パッケージとして、英・スウェーデン系のBAEシステムズ・ボフォース社が開発したトライドンMk2自走式対空砲システムや、スウェーデンのボフォース社が開発し、現在は同国のサーブグループが手がけるRBS 70携帯式防空ミサイルシステム(MANPADS)を提供する。リトアニアもRBS 70を近く譲渡する。
アイルランドは、スウェーデンのエリクソン・マイクロウェーブ・システムズ(現サーブ)社が開発したジラフ防空レーダーシステムを引き渡すと伝えられる。ジラフはRBS 70など向けに迎撃目標を探知できる。
リトアニアのギターナス・ナウセーダ大統領は「ウクライナにとって良い知らせ」だと述べている。
RBS 70は携行可能な防空ミサイルシステムの定番だ。重量55kgほどの発射機から発射される30kg強のミサイルは、レーザー誘導で最大9km先、高度5000mの固定翼機や回転翼機(ヘリコプター)、ドローン(無人機)などを攻撃できる。一式は分解して3人のチームで持ち運び、1〜2分でセットアップ可能だ。
防空レーダーのジラフは4人で運用され、トラックか、アイルランドが保有する7両の場合はスウェーデン製のBv.206装軌牽引車両に搭載されている。RBS 70のチームはこのレーダーを利用することで、探知可能範囲がおよそ50kmに広がる。ジラフは目標の座標をRBS 70などのミサイルチーム側に送信したり、発射機につながったケーブル経由で直接伝達したりできる。
RBS 70の発射機側では、目標の手がかりは視覚のほか音声でも与えられる。拡大照準内で目標が近づいてくるにつれて、音声が大きくなる仕組みになっている。射手が発射ボタンを押すと、ミサイルが発射される。発射機に付属のレーザーが作動する。ミサイルは目標から反射するレーザー光を探す。「目標に命中させるには、射手は照準を十字線の真ん中に合わせるだけでいい」と人気動画チャンネルのWeapon Detectiveは解説している。