ロシア西部クルスク州で23日かその少し前、ロシア軍の装甲強化車両、通称「亀戦車」がウクライナ軍の陣地線に到達しかけた。
ドローン(無人機)から身を守るため納屋のような追加装甲をまとった亀戦車は、1両だけで地雷原を突き進み、地雷6個かそこらの爆発をしのぎながら、ウクライナ側が保持する650平方kmほどの突出部の北西周縁の中間地帯を抜けてきた。
しかし、その大きな即席装甲があだとなったようだ。追加の金属板で視界が遮られていたとみられる操縦手は、進路前方にあった深い穴に気づかなかった。ウクライナ軍の第47独立機械化旅団の監視ドローンが見守るなか、亀戦車は砲弾クレーターかもしれないこの穴ぼこに落ち込んだ。
すぐに、ウクライナ軍のFPV(一人称視点)自爆ドローンが亀戦車に突っ込んだ。ロシア兵のひとりはどうにか車両から脱出したが、少し歩いたあとで雪原に倒れ込んでいる。
Mine resistant Turtle ✅
— imi (m) (@moklasen) February 23, 2025
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ウクライナ軍はかねてこうした事態があり得ると見込んでいた。セルヒー・ミシュラ中佐は、ウクライナ軍の第22独立機械化旅団が昨年、乗員2人とともに捕らえたT-62改造型亀戦車を検分した際、欠点のひとつとして「操縦手の視界がゼロに近い」ことを指摘していた。
この亀戦車の「死地への旅」(第47機械化旅団)は、4年目に入ったロシアによる全面戦争で数え切れないほど起こってきた似たような事例のひとつにすぎない。ロシア軍はクルスク州では今月、後退も強いられたが、ウクライナ東部のいくつかの前線でじわじわと前進している。
だが、その代償は甚大だ。ロシア軍はこの3年で、車両をはじめとする装備をおよそ1万5500点失った。ウクライナ軍の損失数のざっと2倍だ。
2022年2月以来のロシア軍の人的損害も80万人近くに達する可能性がある。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は昨年12月、ウクライナ側の戦死者は4万3000人、戦傷者は37万人としており(編集注:2月初めのインタビューでは戦死者4万5100人、戦傷者39万人と述べている)、ロシア側に比べるとかなり少ない。ロシア軍のある脱走兵の証言によれば、ロシア側がウクライナ兵を1人殺すごとにウクライナ側がロシア兵を7人程度殺している前線もあるらしい。