【重要なお知らせ:当社を装った偽サイトにご注意ください】

政治

2025.02.24 11:00

米国が狙うウクライナの天然資源、チタンやリチウムなど欧州最大の埋蔵量

ウクライナの首都キーウで会談する同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領(左)と米国のキース・ケロッグ特使。2025年2月20日撮影(Vitalii Nosach/Global Images Ukraine via Getty Images)

ウクライナの首都キーウで会談する同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領(左)と米国のキース・ケロッグ特使。2025年2月20日撮影(Vitalii Nosach/Global Images Ukraine via Getty Images)

米国のドナルド・トランプ大統領はウクライナに対し、これまで提供した軍事支援と引き換えに、同国に埋蔵する5000億ドル(約74兆5700億円)相当の天然資源の権益を譲渡するよう求めている。ウクライナは、チタン、リチウム、黒鉛、ウランなどの鉱物資源で、欧州一の埋蔵量を誇る。

一方、米議会調査局の報告書によると、今年1月時点のウクライナの戦争資金は1740億ドル(約25兆9500億円)強で、トランプ大統領が主張する米国の拠出金額である3500億ドル(約52兆2000億円)よりはるかに少ない。

ウクライナの環境保護・天然資源省によると、同国の黒鉛とリチウムの埋蔵量は欧州第1位で、世界全体の6%を占める。同国はチタン埋蔵量でも欧州最大で、「米国と欧州連合(EU)の金属チタン需要を25年間満たすことができる」としている。また、ウランの埋蔵量も欧州一であるほか、ベリリウムの埋蔵量は「世界の生産量の40年分に相当する」という。これらの鉱物は、装甲車両や軍備品、電池や核燃料の製造に欠かせない材料だ。ウクライナがトランプ大統領の要求をのめば、米国はこれらの資源の輸入で、中国やロシアへの依存を軽減できる可能性がある。

スコット・ベッセント米財務長官は先に、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に協定案を提示していたが、同大統領は自国の安全保障の観点から検討する時間が必要だとして、署名には応じなかった。同協定案には、鉱物資源に加え、石油と天然ガスを含むウクライナの天然資源の権益の50%を米国に譲渡することが盛り込まれていた。マルコ・ルビオ米国務長官は「われわれがあなた方と共同事業をしたいのは、あなたの国から盗もうとしているのではなく、それが実際は安全保障になると考えているからだ」と述べ、ウクライナに協定への署名を促していた。

ゼレンスキー大統領が署名を拒否したことに対し、トランプ大統領は18日、ウクライナはロシアとの戦争を「始めなければ良かったのだ。取引はできたはずだ」と発言。ウクライナ側が戦争を開始したという、的外れな非難をした。トランプ大統領はさらに、ゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼び、同大統領が唯一「得意だったのは、ジョー・バイデン(前大統領)をバイオリンのように操ること」だけだったとやゆした。これに対し、ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領は「偽情報空間に生きている」と応酬した。

米紙ウォールストリート・ジャーナルは21日、米国とウクライナは緊迫した舌戦を繰り広げているが、結論は間近に迫っていると報じた。ゼレンスキー大統領は同日、ウクライナと米国は二国間の合意案の作成に取り組んでいるとして、両国が合意に向けて前進していることを示唆。その上で、「最も重要なのは、合意の内容が実際に機能するよう詳細を詰めることだ」と強調した。他方で、米CNNは22日朝、交渉に詳しい消息筋が、現在の合意案は「ゼレンスキー大統領が受け入れるものではない」として、この合意案を「戦争の被害者である国から奪おうとする奇妙な提案」だと述べたと伝えた。

ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ウクライナの鉱物資源を狙うトランプ大統領を「極めて傲慢(ごうまん)で、極めて自己中心的だ」と糾弾。ウクライナの天然資源は戦後の復興資金を得るために必要なのであって、トランプ大統領との交渉の材料に使うためではないと非難した。

米首都ワシントンで21日に開かれた保守政治行動会議(CPAC)では、国家安全保障を担当するマイク・ウォルツ大統領補佐官が、ゼレンスキー大統領は自国の天然資源の権益の50%を米国に譲渡する協定に署名するだろうと主張した。「これが結論だ。ゼレンスキー大統領はその取引に署名する。間もなくそれが実現するだろう」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

連載

Updates:ウクライナ情勢

ForbesBrandVoice

人気記事