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2025.02.20 17:30

韓国生まれの「リートン」が目指すAIスーパーアプリ

イ・セヨン|リートンテクノロジーズ最高経営責任者(CEO)

「準備は結局無駄になりました。参加費や運営費を返金するため、3~4カ月で1億ウォンを工面しなければならなくなり、事務局も解散。そこで、どうせ行き詰まったのだから何かやってみようと、作文のオンライン授業を始めたんです。学術的作文クラスでしたが、すぐに話題になり、なんと3カ月でお金を完済できました。オンラインの力を実感するきっかけになりましたね」(イ)

お金の返済をたったひとりでやり遂げたことが知られると、仲間たちも戻ってきた。そのとき協力してくれた人々が、現在のリートンの中心メンバーとなっている。

パンデミック後、イ・セヨンはKSCYをオンラインで開くことに決めた。参加者数は元々、会場のキャパシティによって限られていたが、オンラインになったことで世界の誰もが参加できる大会となった。22年1月に14日間にわたり開かれた初のオンライン大会には、世界15カ国から5000人以上が参加し、大成功を収めた。

だが、数千人もの参加者が提出した論文は、高校時代に開発した検索技術ではまかないきれない量となった。イ・セヨンは、この新たな課題を解決する新しい技術的ツールが必要だと直感した。

「20年にGPT-3のベータテストに参加したときに開発したものに、学術大会に参加している学生のための作文ツールがありました。リートンというサービス名もそのときにつけたんです。これを22年初めのオンライン大会で参加者に無料で提供したところ、大きな手応えを感じました。これはネイバーやカカオのような『国民的サービス』になりうると確信しました」(イ)

学術大会でのテストは、すぐに次のステップへとつながった。イ・セヨンが注目したのは、コピーライティングサービスだ。履歴書、報道資料、広告コピー、ウェブサイトの中身、フェイスブックやブログの投稿文、職務経歴書など、仕事や日常で使われる文章を収集。そうしてできた対話型AIは、簡単なキーワードを入力するだけで文章の草案をつくりだす。22年10月に公開された「リートンコピーライティング」サービスだ。「1万字で1万ウォン、10万字で10万ウォン」という有料サービスだったが、発表から1週間で加入者は1万人を突破し、爆発的な反響を巻き起こした。予想を超える反応を確認したイ・セヨンは、誰も考え及ばなかった次のカードを出した。サービスの全面無料化である。
リートンテクノロジーズは2023年 11月、日本法人リートンテクノロ ジーズジャパンを設立。韓国と日 本の市場の共通点を把握し、現 地法人設立以前から生成AI技術 のセミナーやプロンプトソンとい ったイベントを開催していたほか、 対話型生成AIサービス「リートン」 の日本語サービスの提供などもす でに始めていた。その結果、韓 国での創業初期にみられたような Jカーブを描き、急成長を遂げて いる。加入者数では、週当たり 10%増となっており、これはシリ コンバレーの世界的アクセラレー ター、Yコンビネータでも突出し た成果とされる数字だ。

リートンテクノロジーズは2023年11月、日本法人リートンテクノロジーズジャパンを設立。韓国と日本の市場の共通点を把握し、現地法人設立以前から生成AI技術のセミナーやプロンプトソンといったイベントを開催していたほか、対話型生成AIサービス「リートン」の日本語サービスの提供などもすでに始めていた。その結果、韓国での創業初期にみられたようなJカーブを描き、急成長を遂げている。加入者数では、週当たり10%増となっており、これはシリコンバレーの世界的アクセラレーター、Yコンビネータでも突出した成果とされる数字だ。

アジアを代表するスーパーアプリに

「有料サービスでありえないような値段をつけたのは、ユーザーの反応を確かめるためだったんです。最初の1カ月の成果を見て全面無料化を決定しました」(イ)

世界初の無料生成AIサービスの開始。その決断が正しかったことはデータが証明した。23年1月の全面無料化後7カ月で、サービスへの累積加入者数は100万人を超え、1年半が過ぎた24年8月時点では400万人を超えた。

「生成型・対話型AIは、メッセンジャーやEメールのように誰もが使うサービスになるでしょう。ネイバーやグーグルがPCのホーム画面であるように、カカオトークやLINEが誰でも使うメッセンジャーであるように、人とAIの“最初の対話”はリートンからだと刻みたかったんです」(イ)
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文=ジャン・ジンウォン 写真=チョイ・ユンジェ/ フォーブス・コリア 編集=森 裕子

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