ファンタジー・ボンドは、心の防衛機制として作用する。それは、「安全で守られている」という偽りの感覚をもたらすが、結果として、真の親密さが根付くことを妨げる。
このようなパターンは、幼少期の経験に由来する。つまり、「自分は、親と分かちがたく結びついている」という幻想を抱くことによって自分の心を守るような関係性を子どものころに習得し、成長後も、他者とのそうした関係性を再び構築せずにはいられないのだ。
こうした行動パターンは後々、付き合う相手とのあいだに十分な愛情や親密さを構築する妨げとなる。表面的にはつながっているように感じていても、いつしか感情的な距離が生まれる。その結果、相手との関係において、自分は理解されていない、あるいは満たされていない、と感じるようになる。
ファンタジー・ボンドと、それが相手との関係に果たす役割を認識せずにいると、表面的なつながりのサイクルから抜け出せない危険があるのだ。
ファンタジー・ボンドが、2人の関係に及ぼす悪影響には、以下の2つがある。
1. 真の対立を避け、表面的な調和を維持する
ファンタジー・ボンドで結ばれた関係においては、パートナー双方が、つながっているという幻想や感情的な安心感を維持するために、本格的な対立を避ける場合がある。例えば、根本的な問題に対処するのではなく、問題に蓋をしたり、受動的な共存のパターンに落ち着いたりする。対立を避けることで、一見すると調和は保たれるが、2002年にInternational Journal of Conflict Management誌に発表された研究では、関係性の強さによって、生じる影響は異なることが示唆されている。
互いへの信頼と敬意が確立している関係においては、対立を避けることで、一時的に平和と生産性を維持できる。しかし、関係がもろく不安定な場合には、対立の回避は逆効果となることが多い。未解決の問題が悪化し、さらなるダメージを引き起こすからだ。
ファンタジー・ボンドによって、すでに感情的な距離があり、心の防衛機制が作用している状況では、本格的な対立を避けることで、健全なコミュニケーションと問題解決が妨げられ、関係を強化する機会が失われる。時間とともに、親密な関係という「幻想」は強化されるが、その一方で、本当の意味で親密になる機会は得られないままだ。