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サイエンス

2025.01.30 12:30

「世界観」がパートナーとの関係に影響? 研究にみる意外な相関

Dmytro Zinkevych / Shutterstock

Dmytro Zinkevych / Shutterstock

私たちが暮らすこの世界は、美しいもので満ちている。だがその反面、困難にも事欠かない。そして、どちらかだけを得るわけにはいかない。

その両方を受け入れなければならない以上、今のこの世界をどう見るのかについて、自分の視点を改めて検証してみよう。この世は美しい場所なのか、それとも醜い場所なのか? 守り、探究し、暮らしていくに値する場所だろうか? あるいは、危険だったり、悲しかったり、退屈だったりする場所に映るだろうか? 

このような相反する見方は、いわば表裏一体の関係にある。どの立場を取るかは、美しいものと困難さの、どちらに焦点を合わせるかによるところが大きい。

恋愛関係も、これと同様の視点で捉えることができる。パートナーとの関係は、驚きに満ちた冒険にもなるが、その反面、いさかいや困難とも無縁ではない。だが、私たちの根本的な世界観は、それよりもはるかに大きな力を持っている。実際、こうした世界観は、その影響力の大きさゆえに、パートナーとの関係の見方に影響を与えることさえあるという。学術誌Personality and Social Psychology Bulletinに2024年11月に掲載された研究結果から、そのメカニズムをひもといてみよう。

人間が持つ「根源的世界観」とは 

この地球では、現時点で82億人以上の人たちが生きている。ここは、家族や友人関係、さまざまな旅、さらには私たち自身の存在まで、人がこれまでに知り、愛してきたものすべてがよりどころとする場所だ。それと同時に、戦争、貧困、憎悪、暴力など、多くの悲惨なことが起きる地でもある。

全体的に見て、地球は非常に多面的な場所だ。この巨大な世界で、今までに起きた良いことと悪いことをすべて記述するのは不可能だろう。ましてや、今後起きることすべてを予測するなどできない。それゆえに、この惑星に対する私たちの思いを簡潔な言葉で語るのは、困難を極める。

こうした状況の中で、ジェレミー・クリフトン博士は、学術誌Psychological Assessmentに掲載された2019年の研究論文の中で、私たちがこの世界に感じる、多様な思いや信念を端的に記述する方法を明らかにした。

具体的には、クリフトン博士が提唱したのは「根源的世界観(primal world beliefs)」という概念だ。これはすなわち、この世界全体の特質に関する基礎となる信念だ。

クリフトン博士は、哲学者や心理学者、科学者による、数千年分の世界の記述を下敷きにして、根源的世界観について、3つの大きなカテゴリーを提唱した。全体としてこれは、この世界を「良いところ」と見るか、「悪いところ」と見るかという構図にまとめられる。

・「安全」対「危険」

「安全」な世界観を持つ者はこの世界を、快く、常に新しく生まれ変わり、前進し、協力し合う場所として受け止めている。彼らの目に映るこの世界は、安定していて公正で、比較的害のない場所、善が栄えることができる場だ。一方、「危険」な世界観では、この世界を暗く容赦ない場所として描く。この世は衰退しつつあり、もろく、競争が激しく、不正や脅迫、みじめさに満ちているというのだ。

・「魅力的」対「退屈」

「魅力的」な世界観とは、好奇心と楽観主義に満ちた見方だ。この視点を持つ者は、この世界を、豊かで美しく意味ある場で、探求や改善のチャンスにあふれていると捉えている。ユーモアと驚きが豊富で、関わる価値がある場だというのだ。逆に、「退屈」な世界観では、この世を不毛で魅力に欠け、簡単には変わらない場と見ている。退屈で醜く、意味ある経験や楽しめる経験など皆無の場所、という受け止め方だ。

・「生きている」対「機械的」

この世を「生きている」と見る者は、人類と、それを取り巻く環境とのあいだにある、意図的で双方向的な関係性に価値を置く。目的意識や周囲とのつながりを実感し、自分はこの世に意義ある形で関わる運命にある、と感じている。対照的に、「機械的」な世界観では、世界全体は偶然によって支配されていると感じている。こうした視点を持つ者は、この世は自分とは関係なく回っていると感じていて、意図や双方向のやりとりなどはなく、所属意識や目的意識もほとんど感じることはない。

クリフトンの調査結果によれば、米国民の20%は、この世を悪い場所、すなわち、危険で退屈、かつ機械的なところだと捉えている。一方、全体の70%は、この世を良い場所、つまり安全で魅力的で生気にあふれていると見ている。残りの10%は、この世を凡庸な場所だと見ている。これは、上記の3つのカテゴリーの中間に位置すると見る立場だ。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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