サイエンス

2024.12.18 08:00

米国の謎ドローン騒動、集団ヒステリー化の様相 金星を誤認したケースも

米マサチューセッツ州ケープコッドの夕空(SteveBosselman/Getty Images)

米マサチューセッツ州ケープコッドの夕空(SteveBosselman/Getty Images)

地球を滅亡させる巨大彗星を、男が銃で撃ち落とそうとする──これは、ブラックユーモアあふれるSFコメディ映画『ドント・ルック・アップ』(2021年公開)の中で筆者が最も気に入っているシーンのひとつだが、米東海岸で騒動となっているドローン(無人機)とおぼしき物体を銃で撃つ人物の動画をSNSで目にして、このシーンを思い出した。

この動画の信憑性は置いておくとしても、ドローンまたは何らかの不可解な物体を目撃した人が少なからずいること自体に疑いの余地はない。一方で、その証拠だとされる写真や動画の被写体が、ヘリコプターや着陸態勢に入った航空機など、説明のつく存在だった事例もたくさん見た。なんと、金星を見間違えたらしいケースすらある。そこで、この騒動の根を掘り下げてみるのも面白そうだと思った。

まず、背景を説明しておこう。ここ数週間、コネティカット州、マサチューセッツ州、ニュージャージー州、ニューヨーク州、ペンシルベニア州、バージニア州など米東海岸の北東部~中部一帯で、正体不明のドローンの目撃情報が相次いでいる。一般市民や議員たちから疑問や不安、不満の声が上がるのはもっともだ。連邦当局は、敵性勢力や宇宙人による侵略の差し迫った脅威はないと主張している。

米ニューヨーク州リッジ上空で2024年12月12日に撮影された正体不明のドローンとされる画像(Grant Parpan/Newsday RM via Getty Images)

米ニューヨーク州リッジ上空で2024年12月12日に撮影された正体不明のドローンとされる画像(Grant Parpan/Newsday RM via Getty Images)

CNNの報道によれば「連邦捜査局(FBI)と国土安全保障省(DHS)は、ドローン目撃情報の多くは合法的に運用されている小型有人機を市民が誤認したものとみている」という。商用ドローンやその他の飛行物体を誤認したケースもありそうだ。

アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は国民に対し、安全保障上の脅威はないと強調した。米政治専門誌ザ・ヒルのサラ・フォーティンスキー記者は、こう記している。「マヨルカス長官は、毎日数千機のドローンが飛行していると述べ、最近の規則変更によりドローンの夜間飛行が可能になった点を指摘した」
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翻訳・編集=荻原藤緒

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