実は、今回その手法の1つとしてトライしたのが、富山県のお米とコラボして、一流料理人に握ってもらう「飛騨牛握り寿司」の提案だった。「SUSHI」は、もはや世界共通語ともなっている日本の代表的な食であり、そこに「特別な飛騨牛」を組み合わせることで、さらに特別感を伝えることができたと思う。
この飛騨牛握り寿司は、「日本の食の地域性と多様性」をテーマにした「SIAL Paris 2024」のサイドイベントでも披露したが、他県に申し訳ないほどの注目と人気を集めた。筆者も法被を着て、飛騨牛握り寿司を、会場を訪れた食のプロフェッショナルたちに数えきれないほど供したが、とにかく、それを口に入れたあとの驚きの顔、紅潮する頬など、その美味しさに感動する様子が忘れられない。
わかってはいたものの、実演や実食としてダイレクトに「食」を伝えることは、言葉を超えて、グローバルに一気にその地域や風土の魅力を伝えられる重要な武器になると心底実感した。
今回の「SIAL Paris 2024」での岐阜県の事業責任者である岐阜県庁農政部の足立葉子部長は次のように語る。
「岐阜県では、コロナ禍の時期には、オンラインセミナーなどにより、飛騨牛などを海外に売り込み続けてきましたが、昨年度、ようやくリアルな売り込みが再開でき、台湾やマレーシアでプロモーションをしました。その際、『良い』『悪い』の二者択一ではない、相手の細かな嗜好や希望を聞くことによる対面PRの強さを改めて実感しました。
まさに、今回の「SIAL Paris 2024」のような世界屈指の食のイベントにおいても、世界約130カ国以上の人々に向け、試食と丁寧な説明を通して、商談の可能性が大きく広がったことで、その考えが正しかったと思いました。
実際に各国の人々が飛騨牛の柔らかさに感嘆し、また栗きんとんという商品を知らなくても、その味わいに感動するとともに、日本の栗の大きさにびっくりし、扱いたいと言ってくださったのも印象的でした」
観光も、食も、ものづくりも、私たちの仕事は常に丁寧な説明からはじまり、その取り組みは、コロナ禍を経て、実食などの実体験として、FACE To FACEの関わりというコミュニケーションフェーズにやっと再び戻ってきた。まさに、世界はそのように動き始めているのだということを「SIAL Paris 2024」に参加して実感したのだ。
※SIAL Paris 2024
世界130の国と地域と7500社以上の企業が参加。約40万の出品があり、革新的な食品や製品、機器などが集まる食品業界で世界最大規模の見本市。業界の生産者、輸入業者、バイヤー、小売業者などあらゆるレベルで多種多様な企業が参加する。今回の来場者数は約28万5000人(2022年は約26万5000人)。