春節で京都に次ぐ人気を集めた岐阜県の海外インバウンド戦略とは?

アジア系の外国人観光客で賑わう岐阜の白川郷

「岐阜県、インバウンドですごいことになっているんだって?」

2月上旬、そんなメールが続々と私のもとに届きはじめた。最近こそ少し落ち着いたものの、一時はその話題で持ちきりだった。
 
実は、1月末、アジア最大級のオプショナルツアーの予約サイトを運営する「KKDAY JAPAN」から、今年の春節(旧正月)の大型連休中に訪問したい日本の人気都道府県ランキングが発表され、総合結果として、1位 東京、2位 大阪、3位 北海道、4位 京都に次いで、なんと岐阜県が5位と発表されたのだ。

これは、世界75万人以上のユーザーが利用する体験予約サイト「KKday」での、アジアの中華系の人々が実際にこの期間中の旅を予約したデータをもとに出された結果で、国別の予約数のランキングは、以下の表のようになっている。


さらに今年の旅の傾向として「都市圏の予約数が減少した一方、地方が人気で、特に人気が拡大しているのが岐阜県で、春節の予約数はすでに昨年と比較して200パーセント以上増(実際は300パーセント増)。白川郷や飛騨高山の人気に加え、スキー場なども多くの予約がある」と大きく発信された。

インバウンド観光客でごったがえす高山市上三之町の古い町並み

インバウンド観光客でごったがえす高山市上三之町の古い町並み

実際に春節の期間中には、高山市上三之町の古い町並みや、世界遺産白川郷の合掌集落などは、香港やシンガポール、マレーシアなどのアジア圏からの旅行者であふれかえり、多言語がとびかうなか、飲食店では長い行列ができ、風情ある建物などを背景に記念写真を撮る姿が至る所で見られた。周辺駐車場も観光バスなどで溢れ、旅館、ホテルもほぼ満室という状態が続くなど、かなりの賑わいとなっている。

コロナ禍3年間もプロモーションを継続

岐阜県の海外観光戦略を担ってきた私としても、「KKDAY JAPAN」のランキングを最初に聞いたとき、正直に言うと嬉しいと同時に、「当然だよね!」という気持ちにもなった。なぜなら岐阜県は、新型コロナウイルス感染症によってインバウンドが完全にストップした3年の間も、ネットを活用するなど、さまざまなプロモーション活動をし続けてきたからだ。

例えば、コロナ禍の直前に、フランスの映画スタッフに制作してもらった県のプロモーション動画を、「自宅で岐阜県へのヴァーチャル旅行を楽しんで!」という企画として、世界各国の旅行会社やメディアなど1万社以上にプレスリリースとして提供していた。

そのほか、オンラインイベントの実施など、できる限りの効果的な手法で、ターゲット国に対して県の自然や伝統文化、食、ものづくりなどの魅力発信をし続けてきた。

ちなみに、このPR動画の視聴はYouTubeで1700万再生突破という効果も生んだ。コロナ禍のなかで、世界各国の人々がネットでの旅を楽しみ、いつかは岐阜へとの旅心を育んでくれたのだと確信している。

また、困窮しているであろう各国の訪日旅行会社や事業者へのアプローチも続け、彼らが求めるサポート事業などに適切な予算をつけて実施して、特別な信頼関係も紡いできた。

そして、昨年のこのコラムでも紹介したように、海外渡航が可能となった昨年7月には、「海外戦略第2ラウンドのリスタート」として、岐阜県の古田肇知事によるトップセールスを、台湾、シンガポール、マレーシアなどで実施し、コロナが5類に移行して初めて迎える春節休暇での岐阜旅を意識したプロモーションを行った。

シンガポールの富裕層に特化した訪日旅行会社への岐阜県知事のトップ―セールス

シンガポールの富裕層に特化した訪日旅行会社への岐阜県知事のトップ―セールス

シンガポールの海外旅行博へ出展

シンガポールの海外旅行博へ出展

アメリカのロサンゼルスで行われた旅行博へ出展

アメリカのロサンゼルスで行われた旅行博へ出展

そんななかで「岐阜県が全国5位!」というニュースは、私の想像を遥かに超えるスピードと反響で、地元メディアはもちろん、全国放送のワイドショーや、モーニングショー、報道番組などで連日、続々と取り上げられ始めたのだ。

多分、全国メディアからこれほど取り上げられたのは、港も空港もないのに「なぜ、岐阜県が?」という驚きがメディアの人たちの間にあったからだろう。
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文=古田菜穂子 写真提供=岐阜県

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