経済・社会

2024.02.26 19:30

春節で京都に次ぐ人気を集めた岐阜県の海外インバウンド戦略とは?

アジア系の外国人観光客で賑わう岐阜の白川郷

「観光DX」デジタルマーケティングに取り組む

「なぜ、岐阜県が?」というメディアからの取材については、岐阜県の観光誘客推進課の加藤英彦課長が縷々答えてくれている。彼は、私が2009年から県の観光交流推進局長を拝命して以来、ある意味、二人三脚で、ともにインバウンドプロモーションを行ってきた同志のような存在だ。
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かつてシンガポールをターゲット国に定めた時期には、彼をシンガポールの日本政府観光局( JNTO)に派遣し、行政マンとしては異例の4年間、駐在してもらった。その年間で、彼がシンガポールだけではなく、マレーシア、インドネシア、タイなど東南アジア諸国の現地旅行会社や、重要な人々との関係をしっかりと紡いできてくれた。

県庁に戻ってからも、「観光、食、もの」の一体的なプロモーションに関わる部署に携わりながら、岐阜県のインバウンドプロモーションをひっぱってきてくれた。

5年以上前のことになるが、私が日本で開催された 国連世界観光機関(UNWTO)の国際会議に出席した際に、「これからは国際基準に則した、着地型のサステナブルツーリズムを推進することが重要だ」と決心し、岐阜県でそれを実行したいと彼に深夜のコンビニのイートインコーナーで告げたことがある。
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彼は、即座に「わかりました! 勉強します!」と言って、翌年、県の事業となるようすぐに動くなど、まさに行動の人だった。そのなかでも、この数年、彼が特に注力してきたがことが、「観光DX」デジタルマーケティングへの取り組みだ。

例えば、他県にさきがけて、サステナブルツーリズムとデジタルマーケティング研修を制度化し、その成果を生かすツール開発への支援制度の策定や、9言語に及ぶ県の観光PR用WEBサイトにおけるSEO対策の徹底にも取り組んだ。

そこでは、各国の人々がどのようなキーワード検索で流入してくるのかなどを分析し、オンライン広告や旅行博出展時のブースデザインなどにも反映するなど、各国の嗜好に合わせたプロモーションへと導いている。

そのほか、地方の観光事業者のレベルアップを目指して、Googleマップの施設情報(Google Business profile)について、500施設以上の事業者のオーナー登録をサポート。そして、そこから得られた口コミなども含めたデータを、市町村や業種ごとに分析し、情報共有や言語表記のアドバイスなど、DXによるマーケティング成果に裏付けられたプロモーション手法が県内の観光事業者や県職員、市町村職員などにも浸透するよう、コロナ禍で観光の現場がとまっている時間の有効活用につとめてきた。

そして海外への扉が開いた昨年には、12カ国、16の旅行博に岐阜県ブースを出展し、一気に攻めの姿勢に転じた。コロナ禍以後の安心安全、本物志向となった世界の旅の風潮に則った自然豊かな岐阜の旅のプロモーションを行いつつ、現地旅行会社との連携を進めていったのだ。

今年1月、スペインの旅行博での加藤英彦観光誘客推進課長(中央)。駐スペイン日本国特命全権大使中前隆博氏(左から2人目)とともに

今年1月、スペインの旅行博での加藤英彦観光誘客推進課長(中央)。駐スペイン日本国特命全権大使中前隆博氏(左から2人目)とともに



そのためには、着地(訪問先)で体験できる新たな本物の観光コンテンツが必要となる。そこで観光誘客課だけではなく、観光企画課などの他の担当部局員が一体となって、コロナ禍の最中から、体験コンテンツのブラッシュアップや、世界のサステナブルツーリズムの基準に則った環境配慮型の本物体験ができる「ぎふ未来遺産」という新しい観光エリア(デスティネーション)などもつくりあげた。

それらをつないだ「本物体験」を観光商品化し、前述の「KKday」などの予約サイトや、各国の旅行会社などで販売すること。そのような動きをコロナ禍の3年という苦しい時期のなかでも、チャンスに生かしてきた結果が、いま出てきているにちがいない。
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文=古田菜穂子 写真提供=岐阜県

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