食&酒

2023.04.09

廃棄物を利用した日本酒づくりが産んだ「地エネの酒」とは

「地エネの酒 環(めぐる)」。右から神戸酒心館「福寿」(純米吟醸酒)、富久錦「富久錦」(生酛純米酒)、山陽盃酒造「播州一献」(純米吟醸酒)、岡田本家「盛典」(生酛純米酒)

今年2月、まだ寒さの残る兵庫県で開催された「飲むことで、地域の資源が環(めぐ)りだす、サステナブル(持続可能)な酒」の体験ツアーに参加してきた。

こう書くと酒豪のように思われるかもしれないが、実は、私はそれほど飲めるほうではない。ただし、日本酒やワインなどの醸造酒、ウォッカやジンなどの蒸留酒、梅酒やリキュールやべルモットなどの混合酒(薬草酒)の香りやその素材、そしてそれらを産み出す地域のテロワールの違いを味わうことは、嫌いではない。

けっして通ぶっているわけではなく、お酒でもモノづくりでも、ツーリズムでも、そこでしか体験できないバックグランドストーリーを持つ手づくり感満載の希少価値がある「もの」が好きなのだ。その意味で、今回の1泊2日のツアーには、単に酒蔵をめぐるだけではない、まさにそこでしか体験できない、特別なストーリーが用意されていた。

新しい視点を持った日本酒づくり

企画したのは、神戸新聞社が事務局をつとめる「地エネと環境の地域デザイン協議会」。協議会では、ポストコロナや脱温暖化における持続可能性を考え、自然エネルギー資源を生かした分散・ネットーワーク型社会の実現をめざして多様な人々が参画し、情報共有や事業などを行なっているという。

私は、この協議会のコーディネーターで同新聞社の編集委員でもある辻本一好さんからかねてからその活動内容については聞いていた。しかし、前述のように協議会では主にエネルギーと環境問題に取り組んでおり、私の専門分野である観光とは若干活動には距離があるとは思っていた。

でも今回、新たな日本酒プロジェクトをサステナブルな観光事業とリンクさせ、将来はインバウンドにもつなげていきたいという彼らの考えを聞いたとき、それは確かにこれからの観光を考えるのには役に立つかもしれないなと思ったのだ。

元来、兵庫県は酒米の王様である山田錦の生産地であり、「宮水」と呼ばれるミネラルが豊富な地下水、寒造りに最適な六甲おろしが吹くなど、地域ならでわのテロワールが生み出す自然の恵みと、古くからの伝統的な酒造技術を有する杜氏らの存在などにより、日本を代表とする酒どころとして知られている。

とはいえ、そのような日本酒の名産地でも、実際にそれを世界に発信し、販売へとつなげるのは、それほど簡単なことではない。
次ページ > 伸び続ける日本酒の輸出

文=古田 菜穂子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事