AI活用の波に乗る小売業界
実店舗が自ら生まれ変わるために使える最も強力な手段の一つが、最新テクノロジーの導入である。そのまたとない例がAI(人工知能)で、小売業のバリューチェーン全体で活用することが可能だ。実際、コンサルティング会社アクセンチュアの最新報告書によれば、小売業全体の労働時間の50%(在庫管理や需要予想、サプライチェーンの最適化など)は、最新AIモデルを使うことで変革が可能だという。そして言うまでもなく、AIを活用すれば、よりパーソナルなサービスを顧客に提供できるようになる。小売業界リーダーの93%が、今後3~5年でAI投資を拡大する計画だと述べているのは当然といえよう。
実例はまだまだある。米小売大手ウォルマートは、AI駆動型ソリューションを導入した。顧客がそれぞれの個人的かつ具体的なニーズ(「ピーナッツバターとジャムのサンドイッチにぴったりのパン」など)に最適な商品を見つけるのを手助けするものだ。また、店員用のAIアプリ「My Assistant」も導入し、書類作成の効率化や競合他社の価格設定のモニタリング、在庫管理の最適化などに役立てている。
一方、仏大手スーパーマーケットチェーンのカルフールは、「Hopla」というAIチャットボットを導入した。予算や食の好みに応じて商品を選べるよう顧客をアシストし、献立のアイデアや廃棄物の出ない選択肢を提案する。さらに、オンラインで販売商品の説明作成や、入札書の作成、見積もり分析といった調達業務の最適化にも、AIを活用している。
実店舗の未来は明るい
全般的にみて、実店舗業界は強固で健全だ。ただし、新世代の買い物客のために、自ら生まれ変わる必要がある。だからこそ一流ブランドは、独創的な店舗コンセプトを考案し、最新小売テクノロジーを活用して、地域密着型の取り組みに乗り出している。こうした傾向は、あらゆるところで見受けられる。たとえば、ストリートファッションで知られるKith(キス)は、カリフォルニア州マリブにビーチ向け商品を扱う店舗をオープンした。米スーパーマーケットチェーンのホールフーズも小規模店舗を増やしている。インテリアECサイトのWayfair(ウェイフェア)は、シカゴの新店舗にQRコード決済を取り入れ、シームレスな買い物体験を提供している。
従来型店舗の長所を生かしつつ、革新的テクノロジーを取り入れ、地元コミュニティーとつながることで、実店舗(と買い物客)の未来は確実に明るいものとなるだろう。
(forbes.com 原文)