マーケティング

2024.08.20 12:30

小売店の新戦略で、デパートなど実店舗が復活 米国

Battersea Power Station(Getty Images)

今日、優れた成果をあげているデパートは、買い物客がぜひとも店舗を訪れたくなるような演出が必要であることを理解している。商品に実際に触れて感触を知る体験を提供したり、「VIP」体験を演出して自分だけの特別感を味わう機会を提供したり、店員の専門知識を活用してもらったりするなどの演出だ。
advertisement

そうしたデパートはまた、老舗ブランド、新興ブランド、自社ブランドをうまくミックスした品ぞろえをお手頃価格で提供する重要性も認識している。だからこそ、ポップアップ・ストアやデジタル・マーケットプレイスというかたちで、新興ブランドに商品販売の機会を与える事例が増えているのだ。

たとえば米大手デパート、メイシーズのマーケットプレイスでは、2022年からサードパーティ販売業者の商品を購入できるようになった。同じく米大手デパートのノードストロームも、2024年に入って同様のサービスを開始した。育児用品店ベビーザらスは全米各地で実店舗を再開する予定で、出店先の多くは大手デパートのコールズ内だ。

生まれ変わるショッピングモール

ショッピングモールが苦戦しているというニュースも、よく耳にする。確かに、郊外型の巨大ショッピングモールは人気が下がる一方かもしれない。しかしその一方で、より地元に密着した新しいタイプの複合施設が登場している。ショッピングモールもまた、新時代に向けて生まれ変われる可能性があるのだ。

たとえば、米ニューヨークのハドソンヤードは、デザインがひときわ目立つ複合スペースだ。2015年のオープン当初やコロナ禍のあいだこそ客足が伸びなかったが、それ以降は観光客と地元住民が集まる賑やかな商業施設へと変貌を遂げた。
advertisement

ハドソンヤード復活のカギは、ラグジュアリーブランドとお手頃ブランドを柔軟に取り混ぜた品ぞろえと、理髪店や靴修繕店、ワインショップ、日帰りスパといった施設を定期的に入れ替えていることだ。これによってハドソンヤードは、日常の買い物と住民の社交の場として欠かせないエリアになっている。

もう一つ例を挙げよう。英ロンドンにあるバタシー・パワーステーションは、歴史的建築物として知られるレンガ造りの火力発電所を改修した多目的施設だ。もともと周辺地区にあった集客力を活用し、活気ある商業施設へと進化した。

独創的な店舗やサービスが充実している点が売りで、厳選された店舗が集まるマーケットや老舗小売店マークス&スペンサーの高級食材店のほか、スポーツなどのアクティビティアンダーアーマーなどのブランドが企画する革新的な体験も楽しめる。
次ページ > AI活用の波に乗る小売業界

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事