経営・戦略

2024.05.19 14:00

「万引き防止」でAIを活用、技術によって進化する米小売業界

木村拓哉
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Getty Images

米国のBJ's(ビージェイズ)やCostco(コストコ)、Sam’s Club(サムズ・クラブ)といった量販店でまとめ買いをするほとんどの買い物客は、商品の代金を支払った後、店員がカートの中身をサッと調べるあいだ、列に並んで待たなければならないことが多い。これには時間がかかり、イライラさせられる。

量販店も、このようなことをしなければならないことを快く思ってはいない。顧客に迷惑をかけるだけでなく、余分なコストがかかり、完璧な手順とは言い難い。しかし、店を出ようとする買い物客のカートを素早くチェックすることは、このビジネスでは必要悪なのだ。

なぜなら、盗む人がいるからだ。実際、人々はこれまで以上に盗みを働いているようだ。万引きを阻止する方法を見つけることが、小売業者の課題となっている。

そこで登場するのがAIだ。ウォルマート傘下のサムズ・クラブは、AI技術を使った万引き対策を実施しており、これまでに約120店舗で導入されている。これはどのように機能するのだろうか?

顧客が支払いを済ませ、店を出ようとする際に、カートに入れた商品の写真が素早く撮影される。この写真は、AIアルゴリズムによって瞬時に分析され、レシートと電子的に照合される。

問題がなければ、顧客はそのまま通過できる。ウォルマートによると、この技術によって、退店までの時間が大幅に短縮され、顧客体験が向上したという。この過程で従業員が煩わされることはない。

しかし、本当にこれが機能するのだろうか? サムズ・クラブは、これまでのテストに基づき、年内にこのAI退店ソリューションを全店舗に導入すると発表していることから、楽観的になってもよさそうだ。そしてもちろん、テクノロジーが進化するにつれて、状況はより良くなっていくだろう。万引きが完全になくなることはないにせよ、テクノロジーはその影響を大幅に軽減できる。

そして、これは万引きだけの話ではない。現時点において現実的なAIソリューションとは何か、そして、誰が本当に利益を得ているか、という話にも発展する。サムズ・クラブの万引き対策は、2024年におけるAI導入事例の典型的な例と言える。いまのところ、AI導入は完全に大規模組織のゲームになっている。
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翻訳=藤原聡美/ガリレオ

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