アート

2024.08.15 14:15

イタリア企業のアート展示はなぜ「しっくり」感じられたのか?

アレッサンドラ・キアッピーニの作品

英国を代表するアーティストであるデラーは、コレクターや美術界のパトロンがアーティストの変革力を賞賛する様子を何度も目撃してきました。しかし、デラーはこの考えに共感しません。アートは個人の人生を変えることはできるかもしれないけれども、社会の構造的変化をもたらすような力は別のところにあるのでは、と言います。
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「スーパーリッチな人たちは、アーティストをとても信頼していると思いますが、 それは本当に不公平なことだと思います。だって、彼らも自分の役割を果たすべきですから。それに、ただ芸術品を買うだけでは、実際に世界をより良い場所にすることにはなりません。彼らの生活をより良いものにすることはできるかもしれませんが」

さて、企業とアートの関係は

より良い社会を生む、企業とアートの関係性とはどんなものでしょうか。コレクションをコモンズにすることで、より多くの人に個人的な人生の変容をもたらす機会を作る。プライマリーマーケットで、自分の価値観からアーティストを選び応援する。どちらも有効な形です。

しかし、SAIB EGGERグループのケースは、また別のところにあるように見えます。私は「コラボレーション」という姿勢ではないかと思いました。

アートを所有して社会に共有する、またはアーティストを経済援助するという関係性は、アーティストの生活を助けつつ、結果的に誰かの人生を変えるかもしれません。しかし、変革の責任をアーティストに委ね過ぎでは、とも思います。
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社会に良い循環を産むには、価値を分かち合いつつも、独立して自ら考え、行動しているもの同士が交流し、それぞれが新しい視点を得てまた、別の場所で活動していくような関係性が必要です。そういった意味で、SAIB EGGERグループはキアッピーニのコレクターでもパトロンでもなく、コラボレーターとして彼女の自走を支援しているように見えたのです。

この関係性は企業とアートのみならず、その他のどんなクリエイティブ分野とのコラボレーションにおいても言えることだと思います。新・ラグジュアリー的コラボレーションのゴールは、どちらか片方の救済や利益ではなく、お互いに視座や心境の変化をもたらしながら、それぞれが独立して活動していく風景ではないでしょうか。

文=安西洋之(前半)・前澤知美(後半)

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ポストラグジュアリー -360度の風景-

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