しかし、ロシア軍の砲兵部隊にとって問題は戦闘での損失だけではない。2年数カ月におよぶ激戦によって、残っている榴弾砲などの多くも砲身が摩耗しているほか、砲弾も戦争拡大前に比べると減ってきている。
重火力をますます切実に欲する一方、新しい大砲や砲弾の生産に苦労しているロシアは、冷戦初期にさかのぼる兵器が保管されている施設を開け、数十年前に廃れた大砲を引っ張り出した。使う砲弾は、新たな「同盟国」である北朝鮮に頼ることにした。
この新たな動きを示しているのが、1950年代にソ連で開発されたM-46カノン砲の再就役だ。重量7.7tで8人で運用するM-46は、130mm砲弾を1分間に5発のペースで最長27km先に向けて発射する。強力な兵器だが、重くて運搬しにくく、運用には多くの人員を必要とする。そのため、ソ連軍は1970年代により効率的な152mm榴弾砲で置き換えていった。
152mm榴弾砲のような比較的新しい大砲の損失がかさみ、戦争拡大前に備蓄していた砲身や砲弾も減ってきたロシア軍は、時を巻き戻すことになった。ウクライナで戦争を拡大してから1年ほど経過した時点で、M-46の欠点を問題にする余裕はもはやなくなった。古い大砲で補充する以外、選択肢はなかったからだ。
ロシアの屋外保管施設の衛星画像を調査・分析しているOSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリスト、Highmarsedによれば、戦争拡大前にロシアはM-46を確認できる限り665門、予備として保管していた。2024年2月までに、うち65門が取り出された(編集注:Highmarsedによると、取り出されたM-46の一部はシリアに送られた可能性がある。ウクライナの戦場でM-46の損害はこれまで確認されていない)。そして、ここへきて再就役させるペースが上がっている。
7月上旬、ソーシャルメディアに投稿された動画には、前線に列車で輸送中とみられるM-46が映っていた。Highmarsedは先週、ロシア軍は「おそらく、保管されていたM-46の半分ほどを引き出した」との見方を示している。
This is very interesting. I havent counted the exact number yet but they have probably taken about half of the stored 130mm M-46 from storage. https://t.co/GTL7bwTFHW
— Highmarsed (@HighMarsed) July 12, 2024