論文は、ルールの存在や批判的な議論が展開されている点について、「暴力が及ぼす精神的脅威からコミュニティーを守るメカニズムと読み取ることもできる。このメカニズムは、シリアルキラーを解決すべき問題として集合的に「解明」しようとする試みを通じて活性化される」と述べている。
犯罪ノンフィクションは「人間性を知る窓」となる
論文の筆頭著者であるローラ・グリストス博士は、今月付けのプレスリリースで、突き詰めればシリアルキラーは私たちの人間性を異常なまでにはなはだしく思い出させる存在だと説明している。「人気のあるメディアでシリアルキラーが大流行のトピックとなっているようだ。対象の恐ろしさを思えば、矛盾している。だが、この世界に生きる個人として、私たちは常に世の中における自分の立ち位置を理解しようと努めており、シリアルキラーはこのパラドックスの象徴といえる」博士は、シリアルキラーが体現する二面性に、現代を生きる私たちの経験と共鳴するものがあると指摘する。「彼らは人間的であると同時に非人道的だ。それは私たちが、人工知能(AI)のような人間的に見えるけれども明らかにそうでないものと関わりながら、現代社会に生きていることと少し似ている」
このような比較対照は、身近なものと異質なもの、道徳的なものと怪物的なものの境界をまたぐ存在に魅了されやすい人間の性情を浮き彫りにする。AIの本質と、その一見人間的な特徴との兼ね合いを理解しようとするように、私たちはシリアルキラーの人物像を通して、私たち自身の人間性の限界を探っているのだ。
グリストス博士は、こう締めくくっている。「シリアルキラーは謎めいた人物像をもつことが、幾度となく明らかになっている。その人物像は、何よりもその時代のマスメディアによって生み出されたものだ。それは、私たちが人間とは何かという不安を表に出して対処できるようにする効果をもっていると同時に、私たちを大衆社会、産業、文化という機械の非人間的な歯車として再生産してもいる」
(forbes.com 原文)