欧州

2024.07.01 12:30

国境から150kmにある滑空爆弾攻撃機の「巣窟」、ウクライナの攻撃阻む米国の制約

ウクライナ軍にはたしかに、ロシア空軍の滑空爆弾搭載機を阻止する別の方法もある。しかし、ボロネジ・マリシェボ航空基地から発進する航空機に対しては使われなかったり、使われても効果を上げていなかったりするのが現状だ。

選択肢のひとつは、爆撃機が滑空爆弾を発射する前に、パトリオット地対空ミサイルシステムで撃墜するというものだ。問題は、ウクライナ軍の最も優れた防空兵器であるパトリオットの数が、ウクライナの主要都市を守るのにすら足りていないということだ。つまり、ウクライナ軍には、保有するどれかのパトリオットを、第47連隊のSu-34を迎撃できるほど国境近くに展開させられる余裕がない。

ウクライナに配備中もしくは配備予定のパトリオットは、わずか5基だ。1基は首都キーウを守っている。現有の残り2基はそれぞれ南部のオデーサ、北東部のハルキウを守っているとみられる。追加で2基がドイツと米国から供与されることになっているが、まだ届いていない。届けば、それぞれ中部のドニプロと南部のクリビーリフの防御に振り向けられるかもしれない。

支援国からさらに多くのパトリオットが供与されない限り、ウクライナが保有するパトリオットを、ボロネジ・マリシェボ航空基地とハルキウの間の国境線付近に近づける危険を冒すことはないだろう。

今年3月、ウクライナ空軍は貴重なパトリオットをロシア側のドローン(無人機)に発見され、ミサイル攻撃で発射機2基を撃破される損害を出してもいる。フロンテリジェンス・インサイトは「ドローンが飽和した環境で、(ボロネジ・マリシェボ航空基地から出撃する)ジェット機をパトリオットで待ち伏せ攻撃しようとするのは大きなリスクをともなう」と指摘している。

ウクライナ空軍は、今後順次届くF-16戦闘機でロシア空軍の滑空爆弾搭載機に対抗する手もあるが、これも同様にリスクが高い。英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のアナリスト、ジャスティン・ブロンクは最近の論考で「滑空爆弾攻撃の出撃機を着実に迎撃していくというのは相当難しいだろう」と予想している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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