欧州

2024.07.01 12:30

国境から150kmにある滑空爆弾攻撃機の「巣窟」、ウクライナの攻撃阻む米国の制約

2014年5月、ロシア南部ボロネジ州のボロネジ・マリシェボ航空基地で発進準備中のSu-34戦闘爆撃機(Vladimir Mulder / Shutterstock.com)

ウクライナとの国境から150kmかそこらしか離れていないロシア南部ボロネジ州のボロネジ・マリシェボ航空基地は、ウクライナにとってロシア国内の最重要の目標かもしれない。また、本来なら最も脆弱な目標でもあるかもしれない。

しかし現時点では、この基地はウクライナ軍の目標リストから外されているようだ。

ボロネジ・マリシェボ基地からは、ロシア空軍の第47親衛爆撃機航空連隊に所属するスホーイSu-34戦闘爆撃機が連日出撃し、ウクライナ軍の陣地やウクライナの都市に対して、強力な滑空爆弾を40kmかそれ以上離れた空域から発射している。

その被害は深刻だ。ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトは、Su-34が「国境近くの発射エリアに到達し、基地に帰還するには数分しかかからない」と説明する。また、ボロネジ・マリシェボ航空基地には「多数のジェット機が配備されているので、爆撃を同時に実施でき、一度にウクライナ領内の複数の目標を攻撃できる」とも解説している。

第47連隊には双発の超音速機であるSu-34が数十機配備されている。ロシア軍が保有するSu-34の現役機のうち、ほぼ半数がこの連隊に配備されている可能性がある。第47連隊のSu-34は、最近改修されたボロネジ・マリシェボ航空基地の駐機場に頻繁に屋外駐機されている。

これら駐機中のSu-34は、ウクライナ軍が保有する最も優れた遠距離攻撃兵器である米国製ATACMS弾道ミサイルの射程内にある。フロンテリジェンス・インサイトは、ウクライナがこの基地に対する攻撃を許可されれば「そこに配備されている作戦機群全体を無力化できる可能性がある」と言及している。

だが、ジョー・バイデン米政権はウクライナ政府に対して、ATACMSでボロネジ・マリシェボ航空基地を攻撃する許可をまだ与えていない。ロシア軍が1日におよそ100発使用し、ウクライナの軍人や民間人を殺害している滑空爆弾のかなりの割合は、この基地から出撃するSu-34から発射されているが、この不許可のせいでほぼ罰を免れている。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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